【プレビュー】60kg級のV候補筆頭は永山、超激戦73kg級は原田・橋本の組み合わせに明暗/グランドスラム・パリ2022第1日男子
60kg級 優勝候補は永山竜樹、準決勝でフセイノフとのリベンジマッチに挑む
(エントリー18名)
他の階級と比べるとトーナメントのレベルは一段低め。上位層の出場は永山竜樹(了徳寺大職)らAシード選手4名のみだが、永山以外の面子は東京五輪銅メダリストのルカ・ムヘイゼ(フランス)に2021年ブダペスト世界選手権銅メダリストのカラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)、ヨーレ・フェルストラーテン(ベルギー)と、いずれも昨年スポット的に好成績を残して序列を上げた選手ばかり。先週のグランプリ・ポルトガルを制したイ・ハリン(韓国)に昨年のグランドスラム・バクー王者のジャバ・パピナシヴィリ(ジョージア)など活きの良い選手もエントリーしているが、全体としては地味な印象が否めない。
優勝候補はもちろん永山。地力、柔道の技術ともに他の出場者とはかなりの差がある。組み合わせではまず準々決勝でイ・ハリンの挑戦を受け、準決勝では昨年のブダペスト世界選手権で敗れたフセイノフとのリベンジマッチが組まれている。それなりに厳しい組み合わせだが、永山の実力ならばまず問題はないはず。山場であるフセイノフにしても、得意技の「韓国背負い」がルールで禁じられたばかりであり、この技なしでの脅威度はそれほど高くない。ここは良い形でブダペスト世界選手権のリベンジを果たして嫌なイメージを払拭してしまいたいところ。永山の大会出場は同大会以来7か月ぶり。どのような方向性で己の柔道を進化させてきたのか、その戦いぶりに注目したい。今大会の顔ぶれならば優勝は既定路線。内容の伴った勝利が求められることになる。
【プールA】
第1シード:カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)
第8シード:エンフタイワン・アリウンボルド(モンゴル)
有力選手:ヴァンサン・リマール(フランス)
【プールB】
第4シード:永山竜樹(了徳寺大職)
第5シード:イ・ハリン(韓国)
有力選手:セドリック・ヘヴォル(フランス)
【プールC】
第2シード:ヨーレ・フェルストラーテン(ベルギー)
第7シード:マタン・ココラエフ(イスラエル)
有力選手:ホマン・ヴァラディエ=ピカール(フランス)、アラン・クワバラ(ブラジル)
【プールD】
第3シード:ルカ・ムヘイゼ(フランス)
第6シード:ジャバ・パピナシヴィリ(ジョージア)
66kg級 世界大会のメダリスト3名参戦、田中龍馬は準決勝でアン・バウルに挑む
(エントリー22名)
2015年アスタナ世界選手権王者のアン・バウル(韓国)を筆頭に、東京五輪銀メダリストのヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)、2021年ブダペスト世界選手権銅メダリストのヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)と、世界大会のメダリスト3名が参戦。それぞれ第1から第3シードに配された。ここに田中龍馬(筑波大2年)、ウィリアン・リマ(ブラジル)、ルチアン・ボルス=ドゥミトレスク(ルーマニア)ら力のある若手に、階級変更組のワリード・キア(フランス)が加わり、層の厚いトーナメントが出来上がっている。
日本代表の田中は堂々の第4シード配置。初戦(2回戦)でボジダル・テメルコフ(ブルガリア)、準々決勝で2019年世界ジュニア選手権王者のウィリアン・リマ(ブラジル)と、なかなかに骨のある相手との連戦が組まれた。とはいえ、いずれも田中の実力ならば十分に勝利が可能。ここはなんとしてもベスト4まで勝ち上がり、アンに挑戦したいところ。田中とアンはともに担ぎ技をベースとするスタイルだが、地力に関しては田中に分があると見る。組み手の形に拘り過ぎず、二本持って直接力の伝わる形で勝負したい。国内の66kg級は現在阿部一二三(パーク24)と丸山城志郎(ミキハウス)の世界王者2名が大きく抜けており、以降はほぼ横一線で大きな差がない状態にある。現在その集団から抜け出しかけている田中にとって、アン、そしてマルグヴェラシヴィリやヨンドンペレンレイらトップ層と戦う事ができる今大会は、大きなアピールチャンス。ここでしっかり結果を残し、ライバル達に差をつけるとともに、国内ツートップ追撃のきっかけとしたい。
【プールA】
第1シード:アン・バウル(韓国)
第8シード:ワイル・エジネ(アルジェリア)
有力選手:バットグトフ・エルヘムバヤル(モンゴル)
【プールB】
第4シード:田中龍馬(筑波大2年)
第5シード:ウィリアン・リマ(ブラジル)
有力選手:ボジダル・テメルコフ(ブルガリア)、マクシム・ゴベル(フランス)
【プールC】
第2シード:ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
第7シード:ワリード・キア(フランス)
有力選手:ルチアン・ボルス=ドゥミトレスク(ルーマニア)
【プールD】
第3シード:ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)
第6シード:オルランド・ポランコ(キューバ)
有力選手:キム・チャンヨン(韓国)
73kg級 原田健士は2回戦でオルジョフ、日本勢2名の組み合わせは明暗分かれる
(エントリー31名)
第1日男子の目玉階級。東京五輪銀メダリストで2021年ブダペスト世界選手権王者のラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)をはじめ、ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)、ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)、アキル・ジャコヴァ(コソボ)、ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)、ファビオ・バジーレ(イタリア)、ダニエル・カルグニン(ブラジル)と、これぞという強豪がパリに集合。ここに日本代表の橋本壮市(パーク24)と原田健士(ALSOK)までもが加わり、世界大会と比べてもほとんど遜色のない超豪華トーナメントが組まれることとなった。優勝の難度は極めて高い。
日本代表の2名は組み合わせの明暗が分かれ、橋本の山はAシード選手が相性の良いヘイダロフ、序盤の山場も階級を上げたばかりのカルグニンで、かなり戦いやすい。一方の原田は2回戦でいきなりオルジョフ、ここで勝利してもジャコヴァという極めて過酷な配置を引いた。橋本のベスト4入りはアクシデントがない限りまず確実。準決勝の相手もツェンドオチルかバジーレになる可能性が高く、こちらも相性的にそれほど戦いにくい相手ではない。一方、正面から組み合って大砲を打ち込むスタイルの原田にとって、いずれも地力ベースのパワー柔道を行うオルジョフとジャコヴァは厳しい相手。ここで原田の現時点での地力、そしてその地力で自身を上回る相手への対応力が問われることになるだろう。とはいえ、これまで国内で好成績を残しながら国際大会では対戦相手に恵まれなかった原田にとっては、やっと巡ってきた階級のトップ層に挑戦できるチャンス。是非ともモノにして、その力を世界に示したい。
【プールA】
第1シード:ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)
第8シード:マーク・フリストフ(ブルガリア)
有力選手:ジョアン=ベンジャマン・ガバ(フランス)
【プールB】
第4シード:ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
第5シード:アキル・ジャコヴァ(コソボ)
有力選手:ベンジャマン・アクシス(フランス)、シャフラム・アハドフ(ウズベキスタン)
日本代表選手:原田健士(ALSOK)
【プールC】
第2シード:ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)
第7シード:ファビオ・バジーレ(イタリア)
【プールD】
第3シード:ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
第6シード:橋本壮市(パーク24)
有力選手:テオ・リキン(フランス)、ダニエル・カルグニン(ブラジル)
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文責:小林大悟・eJudo編集部