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【東京世界柔道選手権2019特集】気になるアンバウルは阿部の山に配置、阿部-丸山の豪華カードは準決勝で組まれる・男子66kg級直前展望

東京世界柔道選手権2019組み合わせ(公式サイトippon.org内)

阿部一二三 ABE Hifumi(JPN)
3連覇を狙う阿部一二三

エントリーは92名。「概況×有力選手」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。階級の勢力図と現在の流れについてはこの「概況×有力選手」、有力選手の特徴や得意技、実績については「有力選手(選手名鑑)」を参照して頂きたい。

シード予想のとおり、丸山城志郎(ミキハウス)がプールC、阿部一二三(日本体育大4年)がプールDに配され、両者は準決勝で激突する。東京五輪の代表レースは、現状では世界選手権を2連覇している阿部の方が形上リードしている格好だが、丸山は直接対決で2連勝しており国際大会の実績も申し分ない。今回の対戦で阿部が敗れるようなことがあれば序列は逆転することになり、この先に今大会よりも大きな大会がないことを考えるならば限りなくその後の再逆転はほぼ不可能となる。つまり、今大会が天王山。ここで勝利した選手が実質的に東京五輪の代表権を得ると考えてよいだろう。両者ともに絶対に負けられない戦い。双方が死力を尽くしての、歴史に残るような熱戦に期待したい。トーナメント上側の面子を見る限り、仮に疲労していてもこの両者に勝利できる選手はいないと思われる。まず間違いなく、ここを勝ち上がった選手がそのまま優勝することになるだろう。

アン・バウル AN Baul (KOR)
アン・バウル

さて、気になるノーシード選手、もと世界王者アン・バウル(韓国)の配置だが、なんとプールD下側の山に配され、準々決勝で阿部との対戦が組まれることとなった。もちろん次に丸山との大一番を控える阿部にとっては考えられる限り最悪の組み合わせ。謹慎明けのアンの調子のほどは不明ながら、この場に韓国が送り込むということは、少なくとも全く仕上がっていないということは考えられないだろう。アンと阿部はケンカ四つ、そしてアンは「韓国背負い」を得意とする、「引き手を持たなくても戦える」タイプの選手だ。あくまでも結果は阿部の勝利と予想するが、昨年までの阿部の柔道では粘られての消耗は必至である。苦手としていたケンカ四つで、しかも引き手を持たせてもらえない相手に対していかなる技術的上積みがなされたのか、その進化のほどが問われることになるだろう。

有力選手の配置、各プールのひとこと展望は下記。

丸山城志郎 MARUYAMA Joshiro (JPN)
丸山城志郎

【プールA】
第1シード:ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
第8シード:ダニエル・カルグニン(ブラジル)
有力選手:セバスティアン・ザイドル(ドイツ)、キム・リマン(韓国)、ツァイ・ミンイェン(台湾)、イェルドス・ジューマカノフ(カザフスタン)

上側の山はヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)とキム・リマン(韓国)の一騎打ち。現在アン・バウル(韓国)と国内代表の座を争っているキムとしては、阿部、丸山、アンとは反対側の山を引いたことは非常な幸運である。3回戦で対戦するマルグヴェラシヴィリにさえ勝てばベスト4が視野に入る位置であり、このチャンスを是非ともモノにしたい。両者は2017年ブダペスト世界選手権の3位決定戦で対戦しており、その際はキムが先に右小内刈「技有」をリードするも、最後はマルグヴェラシヴィリが左小外掛と横四方固の合技「一本」で逆転勝ちを収めている。両者の実力は競っており、どちらが勝ってもおかしくない好カードだ。

下側の山も実質的にダニエル・カルグニン(ブラジル)のイェルドス・ジューマカノフ(カザフスタン)による一騎打ちの構図となっており、こちらは4回戦で対戦予定。実力的にはジューマカノフの勝ち上がりと予想したい。

【プールB】
第4シード:バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
第5シード:デニス・ヴィエル(モルドバ)
有力選手:ミハイル・プルヤエフ(ロシア)、マニュエル・ロンバルド(イタリア)、イェレブ・アンドラッツ(スロベニア)、ケネス・ファンガンスベケ(ベルギー)、ズミトリー・ミンコウ(ベラルーシ)、セルジュ・オレイニック(ポルトガル)

上側の山は実力者が大勢詰め込まれたこのトーナメント最大の混戦ブロック。実力的にはバルチ・シュマイロフ(イスラエル)、ミハイル・プルヤエフ(ロシア)、マニュエル・ロンバルド(イタリア)の3名が抜けており、シュマイロフとプルヤエフが3回戦で、その勝者とロンバルドが4回戦で戦うことになる。プルヤエフはシュマイロフに過去2勝0敗と敗れたことがなく、先月のグランプリ・ブダペストでも勝利したばかり。これだけみるとプルヤエフが有利に見えるが、この試合ではシュマイロフが終始試合の主導権を握り続け、「指導2」をリードしてからの寝技による逆転負けだった。シュマイロフが同じ轍を踏むとは考え難く、今回は実力どおりにシュマイロフの勝利と予想する。また、続く4回戦のロンバルド戦も、地力の差をそのまま反映する形でシュマイロフが勝ち上がることとなると見る。

下側の山は上側とは対照的に有力選手がほとんどいない無風地帯。シード選手のデニス・ヴィエル(モルドバ)がそのまま勝ち上がることと思われる。このヴィエルは海外勢には珍しい伸びやかな柔道で現在急成長中の注目選手であり、東京五輪までには日本勢の有力なライバルに成長する可能性が高い。この段階で1度その柔道を確認しておくことをお勧めする。

【プールC】
第2シード:丸山城志郎(ミキハウス)
第7シード:イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)
有力選手:パヴェル・ペトリコフ(チェコ)、アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)、キリアン・ルブルーシュ(フランス)、サルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)、ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)、ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)、モハメド・アブデルマウグド(エジプト)

丸山城志郎(ミキハウス)の勝ち抜けが確定的。地力でも柔道でも丸山に比肩しうる選手は見当たらない。ただし、4回戦での対戦が予想されるキリアン・ルブルーシュ(フランス)は相性的な意味で少々嫌な相手だ。丸山の唯一の弱点は投げを狙うがゆえの技出しの遅さだが、この選手は持てる全てを「指導」奪取に注ぎ込む階級屈指の粘戦タイプ。綺麗に投げようなどと色気を出すと絡め取られる可能性もあり、まずはどんな形でもよいのでポイントをリードしてしまいたい。下側の山からは2回戦で対戦が組まれているイェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)とニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)の勝者が勝ち上がってくると予想されるが、どちらがきても丸山ならば問題なく退けることができるはずだ。

【プールD】
第3シード:阿部一二三(日本体育大4年)
第6シード:タル・フリッカー(イスラエル)
有力選手:アルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)、オスニエル・ソリス(キューバ)、マッテオ・メドヴェス(イタリア)、ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)、ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)、アン・バウル(韓国)、バグラチ・ニニアシヴィリ(ジョージア)、ネイサン・カッツ(オーストラリア)

上側の山からは阿部一二三(日本体育大4年)の勝ち上がりが確実。初戦(2回戦)で対戦するアルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)は7月のグランプリ・ザグレブで優勝を飾るなど力をつけてきている選手だが、阿部とはそもそも地力の差が大きく、苦戦することはないはずだ。

一方、下側の山は強豪密集の激戦地帯。2回戦で早くもタル・フリッカー(イスラエル)対ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)、ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)対アン・バウル(韓国)という、常のワールドツアーならば決勝ラウンドクラスの注目カードが2つ組まれている。あくまでも勝ち上がりはアンと予想するが、3回戦では今年4大会連続でワールドツアー3位入賞を果たしているジョージアの新星バグラチ・ニニアシヴィリ(ジョージア)の挑戦を受け、続く4回戦でフリッカーとザンタライアの勝者と対戦と、全選手のなかで最も過酷と言っても過言ではない組み合わせとなっている。アンの調子のほどはどうなのか、阿部と対戦するまでの疲労度合いはどの程度なのかを確認するためにも、是非とも全試合チェックしたいところ。

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