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優勝候補はアグベニュー、最強の挑戦者・田代未来が最後の決戦挑む/東京オリンピック柔道競技女子63kg級階級概況解説・シード予想

階級概況

<2年連続のファイナリスト田代未来>

世界選手権優勝5回(2013年、2014年、2018年〜2020年)の絶対王者クラリス・アグベニュー(フランス)に、2018年、2019年と2年連続で世界選手権2位の“最強のチャレンジャー”田代未来(コマツ)が挑むというのが全体を貫くメインストーリー。形上アグベニュー、田代とともに「三強」を形成している2016年リオデジャネイロ五輪金メダリストのティナ・トルステニャク(スロベニア)をはじめ実力のある選手はいるが、この2人の物語に割って入るのは難しいだろう。

<実力推測マップ。形上三強構図を採ったが、アグベニューと田代の対決がこの階級の軸である。>

田代とアグベニューは過去に11度対戦しており、田代が勝利したのは2017年ワールドマスターズ・サンクトペテルブルクの1度のみ。以降はアグベニューが4連勝中である。ただし以前と比べると内容は競ってきており、現時点で最後の対戦となっている2019年東京世界選手権の決勝はGS延長戦7分に及ぶ大熱戦となっただった。この試合の決着は「指導2」対「指導1」で後のないアグベニューが田代のクロスグリップの左大内刈を左大外巻込に切り返しての「技有」。激闘を終えて畳に倒れ込んだ両者が抱き合って互いの健闘を称え合う様子は実に感動的だった。ただし、この試合には大きな課題が残った。田代の対アグベニュー戦略は組み手と足技で相手の体力を削るというプロセスはほぼ完璧だったが、決定的に出口戦略を欠いていた。結果、すでに疲労困憊でもはや密着しての一撃に賭けるしかない相手に対して自ら密着勝負を仕掛け、逆転を許してしまった。あれから2年。田代は本人のコメントを聞く限り、新たな技術の修得よりも既存の手札の精度向上に時間を割いたようである。当時よりも組み手の厳しさ、足技の威力は上がっているはずであり、あとは最後のピースである「いかに相手に止めを刺すか」を埋めるのみだ。田代が地力で勝るアグベニューに採り得る戦略は前回と同じ体力を削っての勝負のみ。当然アグベニューも前回あと一歩まで追い詰められた反省から早期決着を目指してくると思われ、田代が再びアグベニューを削り切れるのか、そしていかにして決着をつけるのか。最高の舞台での両者の熱戦に期待したい。

表彰台争いに関してはトルステニャクの3位獲得まではほぼ確定として、残りの1枠をそれ以外の選手が奪い合うことになる。有力候補は第1グループのマルティナ・トライドス(ドイツ)ユール・フランセン(オランダ)。ただしこの両者はここのところいまひとつ結果を残せておらず、第2グループや第3グループの選手にも十分にチャンスがある状況だ。

<絶対王者クラリス・アグベニュー>

シード予想

【プールA】
第1シード:クラリス・アグベニュー(フランス)
第8シード:ユール・フランセン(オランダ)
【プールB】
第4シード:キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)
第5シード:ケトレイン・クアドロス(ブラジル)
【プールC】
第2シード:ティナ・トルステニャク(スロベニア)
第7シード:マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)
【プールD】
第3シード:田代未来(日本)
第6シード:マルティナ・トライドス(ドイツ)

<3位決定戦を考えれば、マルティナ・トライドスは悪くない位置を引いた>

ここ数年ほぼ固定されている世界ランクのとおり、アグベニューが第1、田代が第2、トルステニャクが第3シードにそれぞれ配された。田代はまずトルステニャクと準決勝を戦い、決勝でアグベニューと雌雄を決することになる。それぞれの準々決勝の相手はアグベニューがフランセン、トルステニャクがマイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)、田代がトライドスとなっており、田代が1番きつい相手を引いた格好。ただしトライドスとは過去3戦3勝と一方的に勝ち越しており、それほど心配はいらないだろう。メダル争いという点では、トルステニャクと同じ側の山を引いて3位決定戦で戦う必要のないトライドスが一歩リード。シード選手に限定すれば「三強」の空白域であるプールBを勝ち上がってきたキャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)とケトレイン・クアドロス(ブラジル)のいずれかと3位決定戦を争うことになり、高い確率でメダルが期待できるはずだ。

有力選手名鑑

この後アップ予定(メルマガ版は配信済み)の「有力選手名鑑」に実績、組み手や得意技、柔道の特徴をまとめてあるので参照されたい。
ピックアップ選手は田代未来、クラリス・アグベニュー(フランス)、ティナ・トルステニャク(スロベニア)、マルティナ・トライドス(ドイツ)、ユール・フランセン(オランダ)、アガタ・オズドバ=ブラフ(ポーランド)、ケトレイン・クアドロス(ブラジル)、キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)、ヤン・ジュインシア(中国)、マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)、ダリア・ダヴィドワ(ロシア)、マグダレナ・クルサコワ(オーストリア)、アンリケリス・バリオス(ベネズエラ)、渡邊聖未(フィリピン)、オズバス・ソフィ(ハンガリー)、ルーシー・レンシャル(イギリス)、ボルド・ガンハイチ(モンゴル)、ハン・ヒジュ(韓国)、アニャ・オブラドヴィッチ(セルビア)、ギリ・シャリル(イ

<リオ五輪を制したティナ・トルステニャク>

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