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強豪割拠の「修羅の国」、“柔道が強いタイプ”と“勝負師タイプ”がそれぞれのハシゴで頂点目指す/東京オリンピック柔道競技男子90kg級階級概況解説・シード予想

<日本代表は向翔一郎>

階級概況

81kg級に劣らぬ大混戦。この階級も相互研究の結果全体が底上げされ、極めて厚い上位層が形作られている。2019年東京世界選手権の後には上位陣は大きく分けて「柔道自体が強いタイプ」の選手と「試合に強い勝負師タイプ」とに属性が二分されており、このまま平時のツアーでは前者が力を発揮、ビッグゲームに強い後者が五輪でも優位に立つのではという見立てがあったのだが、現在は前者がより戦略的になり、後者が柔道の力自体を増したことでその境目は限りなく曖昧になってきている。

<世界選手権に2度優勝したニコロス・シェラザディシヴィリ>

形上の優勝候補は世界選手権2連覇者(2018年、2019年)のニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)に、ワールドツアーで頭一つ抜けた力を見せているミハイル・イゴルニコフ(ロシア)ラシャ・ベカウリ(ジョージア)、2019年東京世界選手権王者のノエル・ファンテンド(オランダ)の4名。このなかではファンテンドのみが「勝負師タイプ」側に軸足を置く選手だ。優勝争いはこの4名を軸に、第1グループ、第2グループの選手が挑むという構図になる。81kg級ほど競った力関係ではないものの、調子や相性、戦略次第で十分に逆転可能な力関係であり、率直に言って誰が勝ち上がるのかは蓋を開けてみるまで予想し難い。

日本代表の向翔一郎(ALSOK)は第1グループの1人という位置づけ。2019年東京世界選手権では銀メダルを獲得しているものの、このところの成績を見る限り、五輪が1年延期になっている間に勢いが減じてしまった感が強い。ただし本人が「自分は本番に強い」と語っているとおり、向は勝負師の側に軸足を置く選手。話しぶりや表情からは良い意味での開き直りが感じられ、何かを起こしてくれそうな予感はある。まずは序盤戦を確実に勝ち上がり、より「勝負」の要素が強い上位戦でその勝負強さを発揮したい。

シード予想

【プールA】
第1シード:ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)
第8シード:ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)
【プールB】
第4シード:ラシャ・ベカウリ(ジョージア)
第5シード:ダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)
【プールC】
第2シード:ノエル・ファンテンド(オランダ)
第7シード:イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)
【プールD】
第3シード:トート・クリスティアン(ハンガリー)
第6シード:ネマニャ・マイドフ(セルビア)

優勝候補4名は配置が偏り、なんとシェラザディシヴィリとイゴルニコフが同じプールAに詰め込まれてしまった。もちろんこの両者による準々決勝が予選ラウンド最大の山場である。それ以外の2名はベカウリがプールBで準々決勝の相手がダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、ファンテンドがプールCに配され準々決勝の相手がイワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)という組み合わせ。ベスト8の相手との相性も含めて、ファンテンドのみが比較的楽な組み合わせを引いている。日本代表の向もシード外となっており、どのプールを引くかで勝ち上がりの難易度が大きく変わることになる。可能であれば優勝候補不在のプールD、最低でも同じく勝負師タイプで過去に勝利したこともあるファンテンドがシード選手を務めるプールCを引きたいところ。

<なんとミハイル・イゴルニコフシェラザディシヴィリと同居。プールAはこの時点で早くも死の山だ>

有力選手名鑑

引き続きアップする「有力選手名鑑」に実績、組み手や得意技、柔道の特徴をまとめてあるので参照されたい。24名をピックアップした。



<ラシャ・ベカウリ>

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