eJudo版・平成31年全日本柔道選手権予想座談会「『平成最後の全日本』を語りつくす」
平成31年全日本柔道選手権、大会の位置づけと注目選手
古田 西森さんからお願いします。
西森 大きい興味としては「原沢時代が来るか」というところですよね。ここ数年、王子谷選手と二強という感じだったのですが、ここ一年で原沢選手のほうが上がってきていますし、安定感も増しています。他の重量級選手と差がついてきましたよね。あと、個人的に楽しみなのはやっぱり、初出場の斉藤立選手ですね。全日本の大舞台でどれだけスケールのある試合を見せてくれるか、注目したいですね。
古田 林さん、お願いします。
林 去年は「OH時代」、原沢選手と王子谷選手の時代が来ているのではという見立てに沿って話をさせて頂きました。実際に王子谷選手が3回優勝、原沢選手が2回優勝していて、後世振り返るときにはやっぱりこの時代は「OH時代」ということになるのですが、西森さん仰った通り、今年に関しては王子谷選手の力が落ちて来ているのではないかと感じています。逆に原沢選手のほうは、オーバートレーニング症候群で苦しんだり、そういう経験を力にして成長していますし、やっぱり一度退路を断っていることに凄みを感じます、日本中央競馬会を辞めてまでオリンピックに掛けるんだというあの覚悟は、ここにきて少しずつ差になって出て来ているのではないかと思います。
古田 なるほど。
林 それに続く選手としては、小川選手、影浦選手がいますけど、若干の失速感が否めません。色々な理由が考えられますが、試合が多すぎて柔道をなかなか作れていないのではという気がします。
古田 それはかつての全日本選手権に挑んだ人たちが、どういうスケジュールで1年間を過ごしたかという、そういうスケール感での比較の話ですね?
林 そうです。昔の選手たちは年に1度の全日本選手権に向けて、自分を磨き上げていく時間がありました。今は全日本選手権のほかにも、国際大会でも結果を出さないといけない。先日の選抜体重別選手権を見ても、細かい分析を越えて、みな疲れているのではないかと、率直に感じました。
古田 なるほど。
林 ただ、それを踏まえた上で、彼らにとって「全日本に出る」というのはやはり特別なんです。この春いまひとつだった影浦選手や小川選手も、話を聞くと、世界選手権やオリンピックとは関係ない、「全日本を取りたい」という意識を強く感じます。そういう気持ちはかならずパフォーマンスに現れますので、単純に、ここまで不調だから全日本は厳しいとか、そういう話にはならないと思うんですね。彼らが活躍してくれることで、一世一代のパフォーマンスを見せることで、全日本は次元の違う大会なんだ、唯一無二の大会なんだとうことがよくわかるのではないか。そんなことも期待しています。
古田 巨視的な視点で見て、全日本を定点観察することで、「柔道家」としての成長がわかる気がします。既に幾人か名前が挙がっておりますが、注目選手としては?
林 やはり斉藤立選手は楽しみです。あとは最年少の斉藤選手と対戦の可能性がある、最年長の加藤博剛選手に注目しております。加藤選手は自然体、それこそ国際大会と関係ないスパンで全日本一本に絞っていますから、楽しみです。
古田 朝飛先生はいかがでしょう?
朝飛 日本武道館という素晴らしい場で、満杯の観客が一点をじっと見る、その中で行われるこの全日本選手権という大会が、変わらず日本最高峰、世界最高峰であってほしい、今年も素晴らしい試合を見たい。これに尽きます。そして、この全日本は来年の東京五輪の代表選考にもっとも関わる、実は一番大事な大会ではないかと思います。選手に関して言えば、注目しているのは斉藤立選手と中野寛太選手ですね。中野選手が初戦でいきなり王子谷選手と戦いますが、実は中野選手は地力がある選手にこそ強いなと感じるんです。非常に楽しみです。
古田 なるほど。昨年の高校カテゴリの戦いからもそれは感じます。・・・では、いよいよトーナメントの展望に移りたいと思います。原沢選手、王子谷選手、小川選手、影浦選手とさきほど名前の挙がった最重量級4名の山が分かれ、王子谷選手と小川選手の山には比較的本格派が多く、影浦選手の山には技巧派が集結。かなりブロックごとに、選手のタイプが固まった印象です。