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【東京世界柔道選手権2019特集】シード予想と組み合わせの様相は変わらず、ビロディドと渡名喜は勝ち上がりの途上に相性的なハードルあり・女子48kg級直前展望

東京世界柔道選手権2019組み合わせ(公式サイトippon.org内)

渡名喜風南 TONAKI Funa
第1シードは渡名喜風南

エントリーは45名「概況×有力選手」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。有力選手の特徴や得意技については随時更新追加中の「選手名鑑(東京世界柔道選手権2019特集)」を参照されたい。

渡名喜風南(パーク24)と現役世界王者のダリア・ビロディド(ウクライナ)はトーナメントの上下に配置が分かれ、対戦が実現するのは決勝。トップグループがビロディドに挑戦する順番もシード予想のまま、準々決勝でイリーナ・ドルゴワ(ロシア)、準決勝でムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)とガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)の勝者が戦うこととなった。

ドロー上の不確定要素2名はともに渡名喜のいるトーナメント上側に置かれ、エヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)がプールA、カン・ユジョン(韓国)がプールBにそれぞれ配された。渡名喜は3回戦でベスト8入りを賭けてチェルノヴィツキと対戦することとなる。過去の対戦成績では渡名喜が3勝0敗と一方的に勝ち越しているものの、直近の戦いである7月のグランプリ・ブダペストでは、先に右袖釣込腰「技有」を奪われてからの逆転という危うい内容だった。あくまでも勝者は渡名喜と予想するが、以降の戦いを考えるならできるだけ消耗少なく切り抜けたいところ。

ディストリア・クラスニキ KRASNIQI Distria
準決勝はクラスニキとの対戦が濃厚(photo : Judoinside)

続く準々決勝の相手は、シード選手のミリカ・ニコリッチ(セルビア)ではなく、恐らくメラニー・クレモン(フランス)になるかと思われる。この選手は今年3月のグランプリ・トビリシでビロディドに勝利したことで過大に評価されている節があるが、その後の試合ぶりを見る限りあくまでも中堅選手の1人。対戦成績も2勝0敗と渡名喜が勝ち越しており、余裕を持って勝つことができるはずだ。準決勝の相手は組み合わせの相性からディストリア・クラスニキ(コソボ)となる可能性が高い。渡名喜はこの選手とも7月のグランプリ・ブダペストで対戦しており、勝利こそしたものの、内容は「技有」を取り合った末のGS延長戦での合技「一本」だった。失った「技有」は右内股によるもの。渡名喜の強さはその異常な体の力の強さによるところが大きいが、その反面、まさにその体の力に頼って受けが少々雑になる傾向がある。グランプリ・ブダペストでの2つの失点はいずれもこの弱点を突かれてのものであり、より丁寧かつ慎重なモードが必要になるだろう。とはいえ、やはり渡名喜は地力でも技術でも一段抜けており、仮に苦戦したとしても勝利自体は揺るがないと思われる。ただし、例えば前回対戦時のようにポイントを先行されて追う展開となれば消耗は避けられないため、この流れだけはなんとしても避けたいところだ。

ダリア・ビロディド
ダリア・ビロディド (Photo: Judoinside)

一方、ビロディドはベスト8までは完全に無風だが、ここからの組み合わせは明らかに渡名喜よりも厳しい。特に準決勝の相手がムンフバットになった場合は、簡単に勝ち上がるというわけにはいかないはず。ビロディドの強みは高身長ゆえのリーチの長さとパワー、それに寝技となるわけだが、実はムンフバットも162センチと上背があり、フィジカルも間違いなく階級トップクラス。さらに寝技ではむしろビロディドに勝っていると思われ、ビロディドにとっては数少ない自らの強みを相手の弱みにぶつけることができない相手だ。両者はこれが初顔合わせ。最終的には地力と投げの威力の差でビロディド勝利と読むが、間違いなく簡単に勝たせてはもらえないだろう。

ここまでの内容をまとめると、渡名喜、ビロディドともに実力では抜きん出ているものの、ともに勝ち上がりの途上に相性的に苦手とするタイプがおり、その道のり決して楽ではない、となる。両者が決勝で相まみえる可能性は依然として高いが、それまでにどれだけの余力を残すことができるのか。まずはその勝ち上がりに注目だ。

有力選手の配置、各プールのひとこと展望は下記。

パウラ・パレト PARETO Paula
パウラ・パレト

【プールA】
第1シード:渡名喜風南(パーク24)
第8シード:ミリカ・ニコリッチ(セルビア)
有力選手:サビナ・ギリアゾワ(ロシア)、エヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)、マリーナ・チェルニアク(ウクライナ)、メラニー・クレモン(フランス)

渡名喜風南(パーク24)が勝ち上がると予想。見通しについては本文を参照されたし。

【プールB】
第4シード:パウラ・パレト(アルゼンチン)
第5シード:ディストリア・クラスニキ(コソボ)
有力選手:カタリナ・メンツ(ドイツ)、カン・ユジョン(韓国)、マルサ・スタンガル(スロベニア)、ジュリア・フィゲロア(スペイン)

パウラ・パレト(アルゼンチン)とカン・ユジョン(韓国)がベスト8進出を賭けて3回戦を戦い、その勝者をディストリア・クラスニキ(コソボ)が迎え撃つこととなる。クラスニキはパレトに3勝1敗でもっか3連勝中、カンに3勝0敗とどちらの相手も得意としている。パレトとカンはどちらが勝ち上がっても消耗必至であることも勘案すれば、ここはクラスニキが勝ち上がると予想する。クラスニキの山にもマルサ・スタンガル(スロベニア)とジュリア・フィゲロア(スペイン)が置かれているが、いずれも勝敗を揺らすだけの力はないと思われる。

 

ムンフバット・ウランツェツェグ MUNKHBAT Urantsetseg
ムンフバット・ウランツェツェグ

【プールC】
第2シード:ダリア・ビロディド(ウクライナ)
第7シード:イリーナ・ドルゴワ(ロシア)
有力選手:カタリナ・コスタ(ポルトガル)、ラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)、リー・ヤナン(中国)

ダリア・ビロディド(ウクライナ)の勝ち上がりが確実。本文でも触れたとおり、ビロディドの側は完全な無風であり、一切消耗することなくベスト8へ勝ち上がると予想される。準々決勝の相手はまずイリーナ・ドルゴワ(ロシア)となるだろうが、この選手には過去3勝0敗とただでさえ相性がよく、もともとの地力の差を考えれば敗れる可能性はほとんどない。ドルゴワは3回戦でラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)とリー・ヤナン(中国)の勝者の挑戦を受けるが、ここで敗れることはまずなく、ベスト8カードも揺るがない。

【プールD】
第3シード:ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
第6シード:ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)
有力選手:グルカデル・センツルク(トルコ)、モニカ・ウングレアヌ(ルーマニア)、シラ・リショニー(イスラエル)

ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)とガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)による因縁の対決に注目。このブロックにはほかにも有力選手が配されているが、いずれもこの2名と伍する力はない。ガルバドラフはもとモンゴル籍であり、ムンフバットとの競合を避けて国籍変更を行った来歴がある。両者は過去に国際大会で9回戦っており、戦績はムンフバットの5勝4敗。最後の対戦である2018年バクー世界選手権3位決定戦ではガルバドラフが「指導3」の反則で勝利している。もと同僚とあってお互いに手の内は知り尽くしており、これまでの戦いの様相からも競った内容となることは必至だ。

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