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【東京世界柔道選手権2019特集】向翔一郎惜しくも2位、荒れたトーナメント制したのはファンテンド・男子90kg級速報レポート

ノエル・ファンテンド
ダークホースのノエル・ファンテンドがみごと優勝

取材:eJudo編集部
撮影:乾晋也、辺見真也

→東京世界柔道選手権2019組み合わせ(公式サイトippon.org内)
→男子90kg級全試合結果

→特集ページ「東京世界柔道選手権2019・完全ガイド」

東京・日本武道館で行われている東京世界選手権2019は28日、競技日程第5日の男子90kg級と女子70kg級の競技が行われ、男子90kg級はノエル・ファンテンド(オランダ)が優勝した。ファンテンドは初優勝、決勝は日本の向翔一郎(ALSOK)を小外刈「技有」で破った。

この日のトーナメントはまず3回戦で2連覇を狙う優勝候補の筆頭、ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)がアクセル・クレルジェ(フランス)に払巻込「技有」で敗れるという波乱のスタート。シェラザディシヴィリは過去0勝3敗と極端に苦手にしているクレルジェに今回も足元を掬われた。

以後も波乱は続き、2015年の世界王者ガク・ドンハン(韓国)は4回戦でファンテンドにGS延長戦の末「指導3」で敗退。ガクはおそらく負傷中で明らかなコンディション不良、このステージまで勝ち残ったのが不思議なくらいの出来だった。ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)も3回戦でイェスパー・シュミンク(オランダ)に隅落「一本」で敗れ、上位対戦に進めず。

ノエル・ファンテンド
準決勝、ファンテンドがネマニャ・マイドフから袖釣込腰「一本」

荒れ気味のトーナメントを勝ち上がったのは前述ファンテンドと向。ファンテンドは勝負どころの初戦、エドゥアルド・トリッペル(ドイツ)との2回戦を崩袈裟固「一本」で乗り切ると、以降も袖釣込腰「一本」、さらに前述ガク・ドンハンを「指導3」、続いてこの日の台風の目クレルジェを袖釣込腰「技有」、そして準決勝は2017年の世界王者ネマニャ・マイドフ(セルビア)との巧者対決を、互いに「指導2」を失ってからの袖釣込腰「一本」で制して決勝まで辿り着いた。

一方の向は自制の効いた試合ぶり。落ち着いた組み手と的確な作りから得意の背負投を決め続け、全試合一本勝ちで決勝進出。勝負どころと目された昨年2位のイワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)との準々決勝は、GS延長戦に背負投のフェイントを入れた小内刈「一本」で突破した。

決勝、ファンテンドは左大外落から右小外刈に連絡「技有」
決勝、ファンテンドは左大外落から右小外刈に連絡「技有」

決勝は接戦も、大枠は向のペース。しかしあるいは「指導2」のリードがありうると思われた終盤の時間帯を凌がれると、出来上がった一瞬のエアポケットにファンテンドが左大外落。左一本背負投が得意なファンテンドが見せたこのフェイント技を向は後方に退いて回避するが、ファンテンドは体を捨てながら右脚を流し、執念の右小外刈「技有」。残り時間は僅か15秒、向この日初めて背を抱いての一発勝負を試みるがあまりにも時間がなく、このまま優勢勝ちでファンテンドの優勝が決まった。

3位にはクレルジェとマイドフがしぶとく入賞。クリスティアン・トート(ハンガリー)はマイドフとの3位決定戦を落とし、3年連続の5位に終わった。

全体としては、昨年のシェラザディシヴィリの戴冠以降軸になる選手が定まりつつあったかに思われたこの階級がいまだ小差の混戦状態にあることがあらためて示された大会であった。

入賞者および、決勝ラウンドと日本代表選手全試合の戦評は下記。

入賞者

東京世界柔道選手権2019、90kg級メダリスト。左から2位の向翔一郎、優勝のノエル・ファンテンド、3位のアクセル・クレルジェとネマニャ・マイドフ。
90kg級メダリスト。左から2位の向翔一郎、優勝のノエル・ファンテンド、3位のアクセル・クレルジェとネマニャ・マイドフ。

【入賞者】
(エントリー66名)
1.VAN T END, Noel (NED)
2.MUKAI, Shoichiro (JPN)
3.CLERGET, Axel (FRA)
3.MAJDOV, Nemanja (SRB)
5.NYMAN, Marcus (SWE)
5.TOTH, Krisztian (HUN)
7.MEHDIYEV, Mammadali (AZE)
7.SILVA MORALES, Ivan Felipe (CUB)

【成績上位者】
優 勝:ノエル・ファンテンド(オランダ)
準優勝:向翔一郎(ALSOK)
第三位:アクセル・クレルジェ(フランス)、ネマニャ・マイドフ(セルビア)

決勝ラウンド戦評

【3位決定戦】
アクセル・クレルジェ(フランス)○払巻込(3:58)△マーカス・ナイマン(スウェーデン)

アクセル・クレルジェ
3位決定戦、アクセル・クレルジェがマーカス・ナイマンから払巻込「一本」

右相四つ。左構えでまず左手で高い位置を持ってから右組みへのスイッチを狙うナイマン、一方こちらも右構えでこの一手目の左を弾き返しながら一方的に持とうとするクレルジェの双方が手先だけの攻防で弾き、切り合い、30秒クレルジェに所謂「襟隠し」の咎で「指導」。以後も組み手争いが続く。ナイマンが長い腕で構えを変えながら迫り、しかしクレルジェが一手先を読んで切り、交換し、巧い進退で相手に軸にもちどころを一切与えない。ナイマン引き手で横帯を掴む強引な形も見せるがすぐさま切られ、続いて釣り手で左脇を差して反時計回りの支釣込足に打って出るもクレルジェに反応良く浮落に切り返され、なかなか力と体格を展開に反映できない。しかし残り1分を過ぎると左右スイッチから作っての「両奥襟」、引き手で脇を差しての奥襟圧力とクレルジェの警戒線を一瞬突破することが目立ち始める。40秒にはこの形から得意の巴投を見せて、少しづつ展開を得始めた印象。

しかし残り時間が10秒を過ぎたところでクレルジェが動く。まず左に構えて左引き手で右前襟を掴み、左肩を出して相手の右手を切り離す防御組み手から、突如右で肩越しに背中を掴む強気の選択。長身のナイマンが思わず頭を下げたところをまず右大外刈で捕まえ、一歩進んで間を詰めると深く腕を抱え込んで払巻込に連絡する。このところ流行している技術の1つである、倒れ込むのではなくまず詰めてから高く抱える巻き込み技の典型。ナイマン吹っ飛び、残り2秒で「一本」。頭脳派クレルジェ、みごと昨年に続く世界選手権銅メダル獲得。

【3位決定戦】
ネマニャ・マイドフ(セルビア)○合技[隅落・隅落](3:13)△クリスティアン・トート(ハンガリー)

ネマニャ・マイドフ MAJDOV JUDO
3位決定戦、ネマニャ・マイドフがクリスティアン・トート(ハンガリー)の「やぐら投げ」を透かして抱き落とし「技有」

右相四つ。低身長で担ぎ技ベースだがここぞの密着勝負を厭わないトート、一方やや線は細いがつかみどころのない柔道で後の先が上手いマイドフという顔合わせ。タイプの違う2人の「化かしあい」という様相で序盤から試合は激しい組み手争い。大枠は近づいて勝負したいトートを、マイドフが敢えて寄らせたまま相手の軸になる片手を潰して無力化するという形だが、マイドフ相手の引き際には奥襟を叩く狡猾さを見せて攻撃姿勢も演出、トートは己の攻撃意志の高さに比してまったく展開の優位を作れない。主審はこの展開に厳しい評価、攻め合いを演出せんと毅然と動き42秒には双方に「指導」、続いて1分36秒にも2つ目の「指導」を付与。実に2分半近くを残して両者ともにスコア上後がなくなる。
当然試合は加速、トートはすぐさま動き、ほとんどベアハグに近い勢いで突進するとその勢いを利して「やぐら投げ」。マイドフを一瞬腹上に持ち上げる。そのまま時計回りに捩じろうとするがマイドフがバランスよく左足で残すと、トートはおそらく飛び込んで決めようとしたその瞬間に押し返された格好となり、逆に「抱っこ」されたまま右膝が正座の形でふわりと畳に着地してしまう。マイドフ引き上げると体を浴びせて突進「技有」。

リードを得たマイドフは奥襟確保を交えながらつかみどころなく組み手争いを続け、時間の消費を図りつつカウンターのチャンスを伺う。トート右内股を放つも空転して潰され、寝技で時間を使われて苦しい状況。

マイドフ釣り手で奥襟を持つと引き手で袖を得て、横変形にぐにゃりとずれて攻防。トートは釣り手で片襟を差し、時計回りに呼び込んでの右背負投を試みるが、マイドフはその動きに逆らわず、むしろこの移動に乗って大きく前に体重を掛けて踏み込む。想像以上に相手に踏み込まれたトートは背負投を打とうとした格好のまま仰け反って大崩れ。マイドフが浴びせて隅落「技有」。マイドフの上手さが攻撃型のトートを凌駕、合技「一本」の完勝で銅メダル獲得。どうしてもメダルに手が届かないトートはこれで3年連続の5位に終わった

【決勝】
ノエル・ファンテンド(オランダ)○優勢[技有・小外刈]△向翔一郎

決勝、ノエル・ファンテンドが向翔一郎から小外刈「技有」

向が左、ファンテンド右組みのケンカ四つ。ファンテンドは右組みながら左一本背負投ベースで試合を組み立てる技巧派タイプ。
向、2度肩車で先制攻撃もいずれも明らかに浅く掛け潰れる。組み手争いが続く中、1分45秒ファンテンドが得意の左一本背負投に飛び込むが心得た向はあっさり弾き、ファンテンドだけが潰れて「待て」。続く展開一合を経た1分54秒、両者に消極的との咎で「指導」。ここでファンテンドは担ぎ技のフェイントから左の大外刈に飛び込むが中途半端、お互いの体が流れたところから向が先に動いて左内股で振る。これをきっかけに向は左背負投、右背負投と続けて攻める。いずれも浅いが、これに引き続く2分44秒には担ぎ技を晒しながらの左小内刈をコンと当て、崩れたファンテンドはたたらを踏む。向激しく押し込むがファンテンドこらえて「待て」。この小内刈はかなり可能性を感じさせる技で、以後の展望は明るいという印象。また攻めをまとめたことで、主審が「指導2」をファンテンドに与えてもおかしくない機運となる。

しかしこの向やや優位の中で迎えた残り33秒、ファンテンドは片襟を差しながら左背負投フェイントの大外落。組み手とは逆の左技、前への担ぎ技を晒しての後ろ技。二段の外しを入れた奇襲ではあったがここまでは向十分予期して一歩後退、足を外して踏みとどまる。しかしファンテンドは刈り足を着き、倒れ込みながらも刈り足を流して右小外刈を見舞う。この三段目の「外し」には向ついていけず、体側から落ちて「技有」。ファンテンド執念の一撃で試合の様相がまったく変わってしまった。

向ここまでの自制をかなぐりすて、勝負に出るのは今だとばかりに前に走って脇を差す。1度は隅返に潰れたが、以降は前に出、抱いて、起死回生の一発を狙う。しかしファンテンド残る1回の「潰れる権利」を的確に行使。敢えて膝を屈して「待て」を貰い、確信的な偽装攻撃の「指導2」失陥。この時点で残り時間は15秒、向必死に出るも時計は刻々進み、結局このままタイムアップ。ファンテンドは驚きの優勝、向は悔しい銀メダルに終わった

日本代表選手全試合戦評

【2回戦】
向翔一郎○背負投(1:57)△ヴィクタル・クリアヴサウ(ベラルーシ)

向が左、クリアヴサウが右組みのケンカ四つ。お互い前傾姿勢で組み合うと、向のファーストアタックは緩やかな巴投。横巴の形で入ったが、相手が崩れず「待て」。続いての攻撃はまたしても巴投。これは決めの後転行動まで一気に入ったが空転し、先回りした相手が足元で腹を見せた向を抑え込まんと被り掛けたところで「待て」。続いて左背負投に座り込むも作りが足りず決まらない。明らかに動き硬し、そしてチョイスした技が捨身技2つに座り込みの担ぎ技という少々不安な出だしであったが、主審ここで向の手数を認めて1分27秒クリアヴサウに「指導」。これで落ち着きを取り戻した印象の向、まず釣り手で横襟を得て軸を作ると、左肩を出し入れして間合いを整える。引き手を得、背を抱いてきた相手の拘束をこの左肩を動かして外すなりまず鋭い動きで左小内刈、次いで本命の左背負投。入りは低く、決めは大きく。両膝が綺麗に伸びた完璧な一撃決まって「一本」。

【3回戦】
向翔一郎○反則[指導3](3:53)△ペテル・ジルカ(スロバキア)
向が左、ジロカが右組みのケンカ四つ。向が前に出、ジルカが前傾して下がる形での引き手争いが続き、35秒双方に片手の咎による「指導」。向釣り手一本の状態から右方向への肩車を2発、これは決まらなかったがひとまず手数で1つ抜け出す。ジルカは引き手を持たせず、かつ釣り手も切り離しては自分だけが背中を持つ形を求めて偏狭に試合を進めるが、向はあくまで我慢強く、釣り手で前襟を持って丁寧に進退。1分57秒、主審は釣り手で後帯を握ったまま技を仕掛けなかったジルカに対し2つ目の「指導」を宣告する。2分30秒、ジルカが釣り手を肩越しに入れると、その戻りに合わせて向は右襟を握った「韓国背負い」。ジルカが膝をついて耐えると突進して押し込む。この技は投げ切れなかったが手ごたえが生き、続く2分58秒には背を抱えた相手が引き手を切った、その切り際にすぐさま再びの「韓国背負い」。ジルカたまらず転がって「技有」。以後は攻略方法を見つけたとばかりに向が「韓国背負い」で攻め、焦った相手が伸ばして来た引き手を捕まえて左内股、さらに左背負投に繋ぐという好展開。残り7秒、ジルカに3つ目の「指導」が与えられて終戦となった。

【4回戦】
向翔一郎○背負投(2:56)△イェスパー・シュミンク(オランダ)

向が左、シュミンクが右組みのケンカ四つ。向巴投で先制攻撃。シュミンクは引き手で前襟、釣り手で背中を得るが、向がやや前屈しながらも襟、袖と得て芯を作って対峙すると自ら釣り手を離し、あっさり右の巻き込みに潰れる。両手が離れ、向がまったく崩れず立ち続けるこの絵に主審的確に動いて55秒シュミンクに偽装攻撃の「指導」。向が釣り手で前襟を持つとシュミンクほとんどまっすぐ下がり、向は肩車を入れながら前へ出、さらに鋭い左大内刈を入れる。この際相手が釣り手を大きく背中に回すと向は一瞬釣り手を脇に差して背を抱え掛かるが、まだリスクをとる場面ではないと判断したかすぐさまやめる。一瞬中途半端な立ち位置となったがシュミンクこれをチャンスと判断できずに座視、向が離れて攻防はやりなおし。

続く展開の組み際、向が釣り手で前襟を掴むとシュミンクがその袖を片手で切り離す。ところが向絞り切られたそのまま手先をぐるりとまわして掴み返し、右で襟を得るなり右背負投。まさに攻防一致の素晴らしい一撃見事決まって「技有」。

リードの向は釣り手で前襟を得、これを軸に危なげなく進退。時折大内刈に内股と相手に片足を強いながら次の刃の入れどころを探す。シュミンクが背中を得ると脇を差したげな動きも一瞬みせたが、リスクをとらずに場外に弾き出して「待て」。

試合時間3分が迫るところで再び向が動く。まず相手が引き手で右前襟を掴みに来たことを見逃さず引き手で袖を得、次いで釣り手を纏めて相手の引き手の肘下を押すように左大内刈。少々体が浮いたが、釣り手で片襟を押さえていったん体勢を安定させると、この手で今度は肘下を押しながら本命の左背負投。シュミンク左前隅に向かって吹っ飛び、見事な「一本」。右、左と異なる方向に一撃ずつ背負投を決めた、向の技術の高さ際立つ一番だった。

【準々決勝】
向翔一郎○GS小内刈(GS2:36)△イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)

昨年2位の長身選手、イワン=フェリペ・シルバ=モラレスを畳に迎える大一番。前回対戦では向がGS延長戦の小外掛「技有」で勝利しているがまったく油断のならない試合。

この試合は左相四つ。シルバ=モラレス、釣り手を奥襟から肩越しのクロスに替えて左大内刈。回避した向は反時計回りに動いて体勢を直さんとするが、シルバ=モラレスは続いて左小内巻込で襲い掛かる良い組み立て。向さすがに立っては受け切れず、腹ばいに伏せて「待て」。以後は互いに引き手で前襟を得ることを起点にした、組み手の陣地争いが続く。2分、シルバ=モラレスがここから引き手を袖に持ち替え、抜き上げるような左小外刈で激しく追う。しかし向はこのステップの終わりを捉えて右袖釣込腰。あわやポイントという軌道で大きく崩し、展開は決して悪しからず。

終盤、シウバは体を大きく振って釣り手を自ら切っては、引き手で前襟を掴んで前進することを繰り返す。あくまで向に引き手を与えず、一方的に組みたいという構え。向は焦らず前に出続け、残り10秒には双方に消極的との咎で「指導」。試合はこのままGS延長戦へ。

延長は一進一退、シウバは横変形に位置をずらしての左大外刈に左大内刈、さらに右一本背負投と見せるが向はしっかり角度を取っていずれも動ぜず。きわめて丁寧に試合を進めるが、相手の圧を反時計回りに捩じって脱出した際に首を抜いてしまう。向直後に相手の出血を指摘、止血処置のために中断が取られるが主審は手続きを流すことなく、再開となった段のGS59秒、向に首抜きの「指導2」。

スコア上後がなくなった向だが、軽挙することなく落ち着いた進退。組み手争いでは無理をせず形を変えながらチャンスを探り、奥襟を掴んでの支釣込足で時折崩し、2分20秒過ぎには思い切った右袖釣込腰に飛び込んでシルバ=モラレスにプレッシャー。そして続く展開のGS2分33秒、奥襟確保を狙うシウバの釣り手の袖を、緩やかに、流れの中で掴むと突如スピードアップして左小内刈。釣り手は片襟、顔と手首で左背負投のフェイントを入れながら左後隅に力をまとめたこの一撃にシウバはまったく耐えられない。前段、右の前技を食っていたこともあり、この左の後技にはまったく虚を突かれた格好。入りと同時にシウバ=モラレスまさしく畳に埋まって鮮やか「一本」。

【準決勝】
向翔一郎○GS反則[指導3](GS2:17)△マーカス・ナイマン(スウェーデン)

向が左、ナイマン右組みのケンカ四つ。ナイマンの長いリーチの襲来をしかし向がその端緒で止めるという構図の組み手争いが続く。ナイマンも向の担ぎを怖れてか無理押しはせず、1分16秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。以後も双方慎重、いずれかが抜け出すことのない一進一退の組み手争いが続くが、残り1分が近づくところで向が左一本背負投と小内刈の素晴らしいコンビネーションを見せる。これで勢いを得たか、続いて向は左大内刈から左背負投の大技。ナイマンの懐の深さに打点が噛み合わず投げ切れなかったが、3分30秒にはさらに一段思い切った右袖釣込腰に身を躍らせる。ナイマンまたしても長い体を利して耐え切るが、直後消極的との咎で「指導2」。向が優位をとったまま、ナイマンがようやく得意の巴投を1度見せたところで本戦4分間が終了。試合はGS延長戦へ。

延長、ナイマンは両襟で封殺して試合を減速させようと試みるが、向は左背負投を掛け捲る。いずれもナイマンがぎりぎりで回避するが、1分40秒過ぎからはさらにギアを一段上げて大技ラッシュ。左背負投で伏せさせ、右袖釣込腰で側方に転がしてとポイント級の技を連発。疲労のためいずれも決めるには至らなかったが、ここに至って完全に展開を掌握する。ここで審判がおそらくはナイマンへの「指導」の付与を巡って映像チェックを行うも、試合は再開。しかし向腐らず背中を抱いての左内股、相手が時計回りにたたらを踏むと追いかけ、背中を向かせて一方的に畳に突き落とす。主審さすがに動かざるを得ず、2分17秒ナイマンに3つ目の「指導」。向、みごと決勝進出。集中力の高さ際立つ一番だった。

【決勝】
向翔一郎△優勢[技有・小外刈]〇ノエル・ファンテンド(オランダ)

※前掲のため省略

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