eJudo版・平成31年全日本柔道選手権予想座談会「『平成最後の全日本』を語りつくす」

平成20年全日本柔道選手権準々決勝、棟田康幸が生田秀和から支釣込足で逆転の「一本」
「平成の美技」。平成20年全日本柔道選手権準々決勝、棟田康幸が生田秀和から支釣込足で逆転の「一本」

「平成の美技」を挙げる

古田 ちなみに昨日西森さんと雑談していて、「平成これぞの『一本』」という話題でも熱くなってしまったのですが。キリがないので、いくつか挙げるにとどめて切り上げました。何しろ今日がありますので。

朝飛 (勢い込んで)棟田さんの支釣込足で生田秀和が、

古田 入ってますよ!平成20年大会の準々決勝ですね。

西森 生田さんが切り返しの小外刈で「技有」を先に取って。

朝飛 そうです。是が非でも日本一を取りたい棟田さんが、素晴らしい支釣込足「一本」で逆転しました。

古田 生田さんは自らも素晴らしい「一本」を度々決めていますし、全日本の名優ですね。

 投げるときも、投げられるときも綺麗です。

朝飛 穴井隆将さんからも綺麗に「一本」取ったことがありました。

古田 「平成の美技」を考えると、個人的な好みもあるかもしれませんが、同じ人が結構出てきますよね。私が挙げると、鈴木桂治さんと三谷浩一郎さんの登場率が物凄く高くなります。もはや、時間があまりありませんが、このメンバーで話さないのも勿体ない。林さんの「平成の美技」は?

平成26年全日本柔道選手権二回戦、90kg級の吉田優也が、体重165キロの青山正次郎を片襟の右体落に仕留めて「一本」

平成26年大会二回戦、90kg級の吉田優也が、体重165キロの青山正次郎を片襟の右体落に仕留めて「一本」

 吉田優也選手の体落(笑)

一同 あれは素晴らしかった!!

古田 平成26年大会二回戦、90kg級の吉田優也選手が、体重165キロの青山正次郎選手を片襟の右体落で畳に埋めました。

 あれは、感動しました。

古田 急いで言わないと流れてしまいそうなので。平成15年大会準々決勝、鈴木桂治さんが向川肇さんに決めた三段の出足払だけは、どうしても外せません。左足で支釣込足、戻して左足で小内刈、そのまま右足で出足払。魔法のようでした。

朝飛 あれは凄かった。鈴木桂治さんは、片渕慎弥選手に決めた小内刈も素晴らしかった。

古田 平成19年大会の準決勝ですね。

朝飛 小内刈で引きながら反対を真下に吸い込んでいるんですが、次の足が追い掛けているのがもはや肉眼ではわからない。モニターで確認して納得した次第です。

古田 高井洋平さんを投げた小外刈も素晴らしかった。・・・いま、eJudoで、Fighting Filmさんが撮った鈴木桂治さんの足技映像を、日本語版のDVDにするべく作業を進めています。撮影は講道館だったんですが、彼らのアーカイブには鈴木さんの足技映像がぎっしり。そして「やってくれ!」とリクエストしたのが、まさしく向川さんとの試合で決めた出足払でした。アメージングだ、マジックだ、と。

林 説明したところで、出来るかというと難しいでしょう(笑)。

朝飛 彼は「着き際」ではなく、「浮き際」に掛けますよね。凄い能力です。

西森 一度あの技についても聞いたことがあるんですけど、試合でアドリブでやっている技は一個もないと。全部練習で試して、掛かるという確信があるから掛けているんだと。

朝飛 その当時の鈴木桂治さんの練習をみたときに、横移動の凄さが印象的でした。スタンスが広くて、横移動が大きい。それで皆体が振られてしまう。ちょっと振られると足が出て来て投げられて、足を止めると身体がすっと入ってきてこれも投げられる。理にかなっているとはこのことだなと感服しました。

西森 完全なる勘違いでしかないんですけど、例えば井上さんの内股っていうのは、映像で見ても、これはちょっと真似できないなと思ってしまうのですが、鈴木さんの足技って自分でも手が届きそうな気がしてしまうんですよね。

朝飛 そうですね。井上さんも理にかなっているけど瞬発系が入ったりしますから。

古田 鈴木さんは理の柔道。練習すればあんな凄いことが出来るんじゃないか、とこちらに勘違いさせれくれるところが、またいいです。西森さん、一応、「平成の美技」を。

西森 キリがないのですが、ではまず一つ。三谷浩一郎さんが増地克之さんを相手に決めた大外返。

古田 私のリストにも、あります(笑)

西森 大外刈の掛け合い、返す、返さないの攻防のなかで、三谷さんは空中で浮いたまま、そのまま返したんですよね。写真は残っているんですよね(資料を見せる)。この体勢から豪快に返したんですけど、そんなこと物理的にありえるのかと。

林 三谷さんは、間違いなく全日本の主役ですよね。

西森 岡田弘隆さんを投げた内股、

一同 あー。

古田 井上康生さんを投げた一本背負投もあります。

西森 篠原さんを相手にしての内股透も。これすべて、全日本の舞台で決めているわけですからね。

古田 まさに。あの頃、三谷さんが畳に出てくると本当に目が離せなかった。お弁当を食べる手を、もう、止めて(笑)

西森 本格的に柔道を始めたのは高校からなんですよね?

朝飛 そうです。高校2年のときに、監督に僕、右だとうまくいかないから、左に変えさせてくれと監督を説得したんだそうです。その時点でもう頭の中に、相手の力の方向とか回る方向とかが見えてきたのだろうなと思いますね。

西森 同級生、一学年上の代に、強い選手が一杯いたんですよね。

朝飛 そう、この時代の近大福山は強い選手が沢山いました。

林 これがそのまま近大黄金世代につながるんですものね。

西森 近大に行った山崎茂樹さん、竹村典久さん、日大に行った葉山充さん、

朝飛 山本旗六さんもいますよね。錚々たるメンバーです。

西森 いま名前挙げた全員、全日本選手権で活躍していますからね。

古田 しかもこれぞの個性派ばかり。

朝飛 しかも葉山さんいわく、高校に入ってきたときは一流がいない。高校で強くなるんですね。稽古の内容を聞いたことがありますが、面白いですよ。

古田 話は尽きませんが、こういうテーマで始めると次にいけなくなるので…

林 いつまでたっても今年の話に進めませんよ!(笑)

古田 本当は「平成の全日本を振り返る」と、この話題だけに丸々1回使って座談会をやるべきなんでしょうね。一応このあたりで今年の話に移っていきたいと思います。

西森 だいぶ長くなりましたね(笑)

古田 いや、この話題を、しかもこのメンバーでここまでで抑えられたのですから、私としては上出来ですよ!(笑)・・・それではいよいよ31年度大会の位置づけと、注目選手についてそれぞれお聞きしていきたいと思います。

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