【東京世界柔道選手権2019特集】ウルフアロンら新世代グループ台頭中、五輪を前に今大会が勢力図的な潮目・男子100kg級概況×有力選手
階級概況
軽量級からこの階級概況を順番に読んでこられたかたは「またか」と思われるかもしれないが、この100kg級も群雄割拠の戦国時代を迎えている。そもそもこの体重帯はスピードとパワーを兼ね備えた各地のエース級が揃うゾーン。地力の高さから2017年世界選手権王者のウルフアロン(了徳寺大職)と昨年の銅メダリストのニヤズ・イリアソフ(ロシア)を優勝候補に挙げてさせて頂いたが、どちらも決して絶対的な存在というわけではない。トップグループには2年連続世界2位のヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)や現役世界王者のチョ・グハン(韓国)を始め表彰台クラスの強豪がこれでもかと名を連ねており、誰が優勝してもまったくおかしくない。第2グループになると力は一段落ちるものの、いずれもピンポイントでトップグループに勝利するだけの力と具体的な武器の保有があり、これら全員が「刺客」としては十分に機能し得る。よってこの階級も勝敗の予想は困難だ。
注目選手についても個別に名前を挙げることは難しく「有力選手(選手名鑑)」ページに解説は譲るが、近頃非情な存在感を示している「100kg級新世代」とでも呼ぶべき若手選手については簡単に紹介しておきたい。ウルフを筆頭に、イリアソフ、シャディー・エルナハス(カナダ)、ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)、アルマン・アダミアン(ロシア)、そして、今大会には出場していないが飯田健太郎(国士舘大3年)。いずれも投げ一発の威力を売りとする、いわば「組み合って投げ合う」IJF新ルールの申し子。選手ばかりであり、全員が来年の東京五輪の主役候補。今大会の段階でしっかりチェックしておきたい。
有力選手
随時更新。「東京世界選手権完全ガイド」トップページから、100kg級の「有力選手」ボタンをクリックして頂きたい。有力選手をピックアップして、その柔道の傾向と組み手、得意技や実績を紹介する。
シード予想
実力ナンバーワンのウルフアロン(了徳寺大職)は第7シードとしてプールCに配された。ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)やジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)らのトップグループ上位のシード選手はいずれも反対側の山に置かれており、まずまず好配置と考えてよいだろう。準々決勝では現役世界王者のチョ・グハン(韓国)と対戦予定となっているが、試合巧者のウルフにとって連続攻撃による「指導」奪取が基本戦法のチョは戦いやすい相手。それほど苦労せずに勝ち上がれるはずだ。準決勝で対戦する位置のシード選手はペテル・パルチク(イスラエル)とラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)だが、ここはシード外の選手が勝ち上がってくる可能性が高いだろう。ウルフと並んで優勝候補と目されるニヤズ・イリアソフ(ロシア)はシードから漏れており、この選手の配置が最大の不確定要素。ウルフとしてはトーナメントの上側を引いてもらいたいところだ。
【プールA】
第1シード:ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
第8シード:ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
【プールB】
第4シード:マイケル・コレル(オランダ)
第5シード:ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
【プールC】
第2シード:チョ・グハン(韓国)
第7シード:ウルフアロン(了徳寺大職)
【プールD】
第3シード:ペテル・パルチク(イスラエル)
第6シード:ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)