• HOME
  • 記事一覧
  • ニュース
  • 超ハイレベル階級も世代交代の狭間で混戦度合い高まる、3度目の「フォンセカ祭り」あるか?/東京オリンピック柔道競技男子100kg級階級概況解説・シード予想

超ハイレベル階級も世代交代の狭間で混戦度合い高まる、3度目の「フォンセカ祭り」あるか?/東京オリンピック柔道競技男子100kg級階級概況解説・シード予想

<実力推測マップ。この階級も大混戦だ。>

階級概況

3日連続でこの表現に食傷気味の方も多いだろうが、この階級も81kg級、90kg級に劣らぬ混戦模様。上位陣の層が極めて厚く、誰が勝ってもおかしくない。敢えて混戦ぶりに順位をつけるならば、90kg級と81kg級の間といったところだろうか。

<最大の変数がジョルジ・フォンセカ。「軸」のあるなし自体がこのジョーカーにゆだねられた>

本来であればトーナメントの軸が定め難い、限りなく81kg級に近い構図になるはずだったのだが、6月のブダペスト世界選手権でジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)が恐ろしいハイパフォーマンスで2連覇を果たしたことで少々様相が変わった。この選手はご存知のとおり典型的な業師タイプ。凄まじい投げを見せる一方で安定感はなく、トーナメントの途中で集中力を欠いて敗れるのが定位置だった。2019年東京世界選手権で優勝した際も試合内容には一切の安定感なく、綱渡りの連続を制しての戴冠。その再現性はないものと勝手に合点していた。しかし、前述ブダペスト大会でのフォンセカは一貫して極めて集中力高く、勝っても派手に喜ぶようなことはなく落ち着き払い、相手や状況に応じた技術選択も極めて適切。普段のフォンセカらしい無邪気さを見せたのは優勝を決めた後のみだった。実力推測マップで伏兵候補や調子次第で爆発力のある選手を表す「黒枠」に入れたとおり、これがたまたまコンディションが2大会連続で噛み合ったがゆえのことなのか、それともフォンセカが集中力を維持する術をついに身につけたのかは今大会の結果を見るまでわからない。ただし仮に後者であったのならば間違いなく一段抜けた優勝候補。まずは序盤戦、その入場時の様子に注目したい。表の目が出ているのならば、戦う前でも一目でそうと分かるはずだ

<ベテランのヴァルラム・リパルテリアニ。若手の突き上げを食っている格好。>

続いてここからはメダル争い、そしてフォンセカがもし確変を起こしていなかった場合の優勝争いについて述べていく。「確変なし」の場合フォンセカの位置はあくまで第1グループの1人と考えていただきたい。現在の100kg級はヴァルラム・リパルテリアニ(ジョージア)やチョ・グハン(韓国)などのベテラン勢の力の衰えと、ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)やニイアズ・イリアソフ(ロシア)、シャディー・エルナハス(カナダ)ら若手の成長が重なり、かつてないほどの混戦期を迎えている。これは6月のブダペスト世界選手権で90kg級から階級を上げて間もないアレクサンダー・クコリ(セルビア)が後帯を持つ新スタイルを持ち込み準優勝したことに端的であり、コンディションや新兵器、組み合わせのいずれかが噛み合えば、誰でも上位に勝ち上がる可能性がある。順当であれば第1グループからメダリスト4名が輩出される可能性が高いが、第2グループとの間にそれほど大きい差があるわけではなく、ここまでがメダル圏内と考えるべきだろう。第3グループの選手もさすがにメダル獲得まで勝ち上がるのは厳しいと思われるが、第1、第2グループを相手に1試合限定で勝利するだけであれば、十分に想定の範囲内だ。

<ウルフアロンは優勝候補の一角>

日本代表のウルフアロン(了徳寺大職)も第1グループの一員。2017年ブダペスト世界選手権を制している実力者だが、現在の100kg級のハイレベルな環境では、集団から抜けた存在と考えるのは難しい。また、ウルフは2019年に右半月板を負傷して以来、受けの面に不安を抱えており、畳に張り付くかのような以前の安定感はない。今年出場した2大会ではいずれも失点しており、その戦い方からは右膝に力が入らないというよりも新たな体のバランスにまだ慣れていないという印象を受けた。もちろん最高到達点は金メダル。2大会の実戦を経て、この2ヶ月半でどこまで感覚の修正、調整を行ってきたのかに注目だ。

シード予想

<第1グループ選手はほぼ全員がシード枠に入った。>

【プールA】
第1シード:ヴァルラム・リパルテリアニ(ジョージア)
第8シード:シャディー・エルナハス(カナダ)
【プールB】
第4シード:ペテル・パルチク(イスラエル)
第5シード:ウルフアロン(日本)
【プールC】
第2シード:ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
第7シード:ニイアズ・イリアソフ(ロシア)
【プールD】
第3シード:マイケル・コレル(オランダ)
第6シード:チョ・グハン(韓国)

第1グループ(フォンセカ含む)はほぼ全員がシード枠に入り、コツォイエフのみがここから溢れた。優勝候補(仮)のフォンセカは第2シードとしてプールCに置かれ、準々決勝で2019年東京世界選手権で決勝を争ったイリアソフ、準決勝でマイケル・コレル(オランダ)とチョの勝者と対戦せねばならない極めて厳しい組み合わせ。一方のウルフは準々決勝でペテル・パルチク(イスラエル)、準決勝でリパルテリアニとエルナハスの勝者と、この階級としてはかなり戦いやすい組み合わせを引いた。このなかでは両組みのパルチクが少々癖があり厄介だが、リパルテリアニとエルナハスはともに組み合っての柔道をベースとする選手であり、ウルフにとって戦いにくい相手ではない。決勝進出まではプラスアルファの要素がなくても十分に現実的な好配置と言って良いだろう。決勝で当たる4名はフォンセカ以外の誰が来ても過去に敗れたことのある相手であり、仮にフォンセカが上がってくるようならそれは確実に確変状態。いずれにせよ厳しい戦いになると予想されるが、そこまで勝ち上がれるのであればウルフの調子も相当に整っているはず。できるだけ良い内容で勝ち上がり、その勢いで一気に優勝を攫ってしまいたい。

<ニイアズ・イリアソフはフォンセカの山に入った>

有力選手名鑑

「有力選手名鑑」に実績、組み手や得意技、柔道の特徴をまとめてあるので参照されたい。24名をピックアップした。メルマガを先行、事後下記eJudoLITEにも随時アップさせて頂く。

https://lite.ejudo.info/players/10418/

関連記事一覧