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金メダル候補は素根、ライバルはタイプ異なるオルティスとディッコ/東京オリンピック柔道競技女子78kg超級概況解説・シード予想

<素根輝が優勝候補の筆頭>

階級概況

優勝候補は2019年東京世界選手権王者の素根輝(パーク24)。地力、技術、戦略のあらゆる要素で階級のライバルたちから頭一つ抜けており、全方位に隙がない。3月のグランドスラム・タシケントでは優勝こそ果たしたものの好調とは言い難いパフォーマンスで少々心配だったが、本人のコメントやSNSに公開された稽古の様子を見る限り、最近はかなり詰めた稽古ができている様子で精神的にも充実している模様。今大会には調子を上げて臨むことができるはずだ。

<上り調子のニューカマー、ホマーヌ・ディッコ>

対抗馬となるのは、ホマーヌ・ディッコ(フランス)とイダリス・オルティス(キューバ)の2名。ディッコは主要大会で6連勝中のフランス期待の新星。純粋な柔道の強さ、競技力で素根に伍し得る唯一の存在と目されている。パワーと馬力を生かした豪快な柔道が持ち味で、技の破壊力は階級随一だ。素根とは過去に2017年の世界ジュニア選手権で対戦しており、その際は素根が左体落と崩袈裟固で「技有」2つを奪った末に、横四方固で一本勝ちしている(この当時は合技が廃止されていた)。しかし、これはディッコが本格的にワールドツアーに参戦し始める前であり、完全な参考記録。柔道自体の精度の差や、組み手がパワーよりも技術の影響が大きいケンカ四つであることから素根の有利と予想するが、こればかりは実際に戦ってみるまで分からない。

<階級屈指の頭脳派、柔道の奥行き深いイダリス・オルティス>

続いてオルティス。2012年ロンドン五輪の金メダリストであり、2008年北京五輪で銅、2016年リオデジャネイロ五輪で銀とこれまでに出場した五輪3大会でいずれもメダルを獲得している。こちらは戦術面での素根のライバル。駆け引きや組み手の技術に非常に長けており、素根とは毎回高度な頭脳戦を繰り広げている。過去の戦績では素根が3勝1敗と勝ち越しており現在3連勝中だが、いずれもGS延長戦までもつれ込む接戦となっており、決して気の抜けない強敵だ。

<イリーナ・キンゼルスカ。過去素根に2勝の来歴がある>

この2名以外では、実力的には一段落ちるものの、階級随一の大型選手のイリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)が相性的に少々厄介な相手。組み手の左右が利きどちらにも威力のある巻き込み技を仕掛けることができる。素根との戦績は2勝2敗。敗れた2試合ではいずれも体格を利した巻き込み技で投げられている。最後に戦った2019年のグランプリ・ザグレブでは素根が完封して一方的に「指導3」を押し付け勝利しているが、やはりそのサイズとそれが生み出す破壊力は脅威だ。

以上、ここまで素根に抗し得る選手3名について述べてきたが、あくまでも優勝候補は素根。仮に敗れることがあるとすれば、それは素根自身の内的要因によること以外は考えがたい。とはいえ、素根は稽古ができているかがバロメーターの選手。前述のとおり最近は充実した稽古を積めている様子であり、今大会には心身ともに整った状態で臨めるはず。素根らしい気持ちの強さを前面に押し出した柔道で金メダルを獲得してほしい。

<ダークホースはテッシー・サフェルコウルス>

続いてメダル争い。可能性としてはまず素根とそのライバルポジションの2名は高確率で表彰台に上がると予想できる。その場合残る枠は1つ。順当であれば、キンゼルスカを含む第1グループからここに入る選手が出てくるはずだ。ただし、この階級も上位陣の力は競っており、第2グループの選手でも1試合単位ならば第1グループの選手を食ってしまう可能性が十分にあり得る。ほか、注目選手としてはテッシー・サフェルコウルス(オランダ)の名前を挙げておきたい。この選手は昨年2月のグランドスラム・パリで、ディッコの強引な技により右膝に大怪我を負った。その段階で五輪は絶望視されていたが、1年の延期により治療が間に合い、今大会で復帰戦に臨む。もとはワールドマスターズを制するなど階級屈指の実力者であり、どの程度までパフォーマンスを戻しているのかは読み難いが、勝敗は別にその戦いぶりに注目したい選手だ。

シード予想

<シード予想。強豪は綺麗に山が分かれた>

【プールA】
第1シード:イダリス・オルティス(キューバ)
第8シード:ニヘル・シェイフ=ルーフー(チュニジア)
【プールB】
第4シード:マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)
第5シード:ホマーヌ・ディッコ(フランス)
【プールC】
第2シード:イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
第7シード:マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)
【プールD】
第3シード:素根輝(日本)
第6シード:カイラ・サイート(トルコ)

素根はオルティス、ディッコとは山が分かれ、決勝でその勝者の挑戦を受けることになる。最近のディッコとオルティスの調子や、今年1月のワールドマスターズ・ドーハでディッコが一方的な試合内容からの袈裟固「一本」で勝利していることに鑑みれば、ここはディッコが勝ち上がってくると考えるのが妥当だろう。一方素根は準々決勝こそ同じ戦術派で比較的相性の良いカイラ・サイート(トルコ)が相手だが、準決勝ではキンゼルスカと対戦することになる。両者の対戦成績については概況で触れたとおりだが、まずはここが最初の山場。隙を見せることなく組み手で完封して、良い流れで決勝に繋ぎたい。

有力選手名鑑

引き続きアップする「有力選手名鑑」に実績、組み手や得意技、柔道の特徴をまとめてあるので参照されたい。21名をピックアップした。メルマガを先行、事後eJudoLITEにもアップさせて頂く。

選手名鑑 東京2020オリンピック(2021)

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