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【東京世界柔道選手権2019特集】アクシデント乗り越え丸山城志郎が初優勝、阿部一二三は銅メダル・男子66kg級速報レポート

取材:eJudo編集部
撮影:乾晋也、辺見真也

→東京世界柔道選手権2019組み合わせ(公式サイトippon.org内)

男子66kg級全試合結果 

東京世界柔道選手権2019男子73kg級決勝決勝、丸山城志郎がキム・リマンからとどめの腰車「技有」
決勝、丸山城志郎がキム・リマンからとどめの腰車「技有」

日本武道館で行われている東京世界柔道選手権2019は大会2日目の26日、男子66kg級と女子52kg級の2階級の競技が行われ、男子66kg級は丸山城志郎(ミキハウス)が優勝した。丸山は初出場、初優勝。丸山に準決勝で敗れた阿部一二三(日本体育大3年)は3位決定戦に勝って銅メダルを確保した。

東京世界柔道選手権2019男子73kg級決勝準決勝、丸山が阿部一二三から浮技「技有」
準決勝、丸山が阿部一二三から浮技「技有」

丸山と阿部はともに圧勝を重ねて準決勝で激突。事実上の大一番と目されたこの試合は、序盤に大アクシデント。丸山が左手の指を負傷し、次いで膝を痛めて歩くのもやっとの状態に。阿部が押し込むとまったく耐えられず、開始1分18秒で丸山に「指導2」までが積み重なる。勝負はもはや見えたかと思われたがしかし、ここから丸山が得意の左内股を無理やり放って決死の進退。まさに命がけ、両手をぶらりと下げ、目を光らせてにじり寄るその迫力に徐々に阿部が押され始め、GS延長戦に持ち込まれた試合は6分55秒丸山の攻勢で阿部に「指導1」が与えられるところまで煮詰まる。しかし指を負傷して掴めず、足の負傷で跳ねる内股も持ち上げる巴投も打ち切れない丸山には決めるべき技がない。ここで丸山が見舞ったのは浮技。掴めなければ抱え、跳ねられなければ捨てる。背中を抱え、右手を右片襟に入れて作り出した反時計回りの回旋に足元を救われた阿部は逆らえず体側から落ちて劇的「技有」。これで勝負が決した。

丸山、続く決勝は東海大卒のキム・リマン(韓国)から内股「技有」に腰車「技有」と立て続けに奪って快勝。見事世界の頂点を極めた。

敗れた阿部は3位決定戦で、2月のグランドスラム・パリで苦杯を喫したマニュエル・ロンバルドをGS延長戦の右釣腰「一本」に沈めて意地の銅メダルを確保した。

圧倒的な強さを示した日本勢のほか、ひときわ目立っていたのは3位決定戦で相まみえたデニス・ヴィエル(モルドバ)とヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)。特にヨンドンペレンレイは初戦で日本勢最大のライバルと目されたアン・バウル(韓国)を9分41秒「指導3」で破るなどGS延長戦の連続を制し続け、大物狩りを連発。迎えた3位決定戦は体力を前面に押し出したヨンドンペレンレイのパワーを、ワールドツアー同様柔らかい柔道で勝ち進んだヴィエルの技術が凌ぐ面白い試合。最後はヨンドンペレンレイの密着前進をヴィエルが体を反らして吸収、「やぐら投げ」に捉えての一本勝ちで銅メダルを確保した。

銀メダルのキムは、一番手のアン・バウル休養中に頭角を現しての抜擢。そのアンと同時出場の世界選手権で決勝まで進み、オリンピックの舞台に大きく近づいた。

入賞者と、3位決定戦以降および日本代表選手全試合の戦評は下記。全試合結果はこちら。

入賞者

東京世界柔道選手権2019男子73kg級73kg級メダリスト。左から2位のキム・リマン、優勝の丸山城志郎、第3位の阿部一二三とデニス・ヴィエル
メダリスト。左から2位のキム・リマン、優勝の丸山城志郎、第3位の阿部一二三とデニス・ヴィエル。

(エントリー92名)
1.MARUYAMA, Joshiro(JPN)
2.KIM, Limhwan(KOR)
3.ABE, Hifumi(JPN)
3.VIERU, Denis(MDA)
5.LOMBARDO, Manuel(ITA)
5.YONDONPERENLEI, Baskhuu(MGL)
7.ABDELMAWGOUD, Mohamed(EGY)
7.IADOV, Bogdan(UKR)

【成績上位者】
優 勝:丸山城志郎
準優勝:キム・リマン(韓国)
第三位:阿部一二三、デニス・ヴィエル(モルドバ)

決勝ラウンド戦評

【3位決定戦】
阿部一二三○GS釣腰(GS1:40)△マニュエル・ロンバルド(イタリア)

東京世界柔道選手権2019男子73kg級3位決定戦、阿部一二三がマニュエル・ロンバルドから釣腰「一本」
3位決定戦、阿部一二三がマニュエル・ロンバルドから釣腰「一本」

右相四つ。今年2月のグランドスラム・パリでは肩車2発の合技「一本」でロンバルドが金星を挙げた因縁のカード。まずは右引き手で袖を絞り込み、片襟の右背負投で大きく崩す。両袖の小内巻込も繰り出して攻勢を取り、以後は手先の組み手争いをベースに片襟の右背負投、2分には片襟の大外刈と、リスク管理と攻撃のバランスを利かせた良い攻め。1分31秒には一転釣り手で脇を差し、思い切った右大腰。持ち上がったロンバルドが腹ばいに残したことに逆に驚きの声が上がる大技であった。直後ロンバルドに「指導」。阿部は攻めどころを見極めた冷静な試合運び、急ぎ過ぎずに試合を進める。残り32秒には相手の奥襟奇襲に右内巻込で応じ、試合はそのままGS延長戦へ。
阿部の大枠優位は以後変わらずも、延長53秒に大事件。阿部が右一本背負投、耐えたロンバルドを無理やり後隅に押し込んで投げ切ろうとするが、ロンバルドは絡みつき、右脚を回して股中に入れて横車。ここで阿部が耐えて時間差があったが、阿部の落ち際を浮技様にコントロールして叩きつけ「一本」。
しかしここで映像チェックが入る。作りも典型的な横車、決めも阿部の体をコントロールしており控えめに見ても「技有」はあるかと思われたがなんとこれは技の効果自体が取り消しとなる。命拾いした阿部、ロンバルドが引き手で脇を差すと応じて上から右釣り手でこれを包み、右釣腰一撃。後帯を握って拘束が強まったぶん、今度はロンバルド逃げられず。高く宙を舞い、畳に埋まって「一本」

【3位決定戦】
デニス・ヴィエル(モルドバ)○GS内股(GS0:17)△ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)

東京世界柔道選手権2019男子73kg級3位決定戦、デニス・ヴィエルがヨンドンペレンレイ・バスフーから内股「一本
3位決定戦、デニス・ヴィエルがヨンドンペレンレイ・バスフーから内股「一本

ともにトーナメント前半戦では主役級の働き、柔道が柔らく細い体躯のヴィエル、体力で押し切るガッチリ型のヨンドンペインレイと対照的な役者による一番。ヴィエルが左、ヨンドンペレンレイが左組みのケンカ四つ。両袖からヴィエルが左小外刈で崩して攻勢だが、52秒袖口を握り込んだ咎で「指導」。しかしヴィエル「やぐら投げ」に巴投と技を積み、2分3秒には消極的の咎でヨンドンペレンレイにも「指導」。ヨンドンペレンレイが奥襟で拘束もヴィエルが巧みな体捌きと足技でこれを剥がすという展開が続き、3分23秒には主審が攻撃を促す形で両者に「指導2」を与える。ここでヨンドンペレンレイ激しく前に出るがヴィエル横にずれながらの膝車で手籠手を抑えて崩し、動ぜず。試合はGS延長戦へ。

ヨンドンペレンレイ、ここで勝負に出る。左で肩裏、右で脇を差して激しく前に出る。抱きつきの小外掛を狙う体の突進であるが、ヴィエルはこれを止めず、上体を後に傾けてこの力を吸いこむ体の「やぐら投げ」で持ち上げる。ヨンドンペレンレイの大きな体がふわりと持ち上がり、ヴィエルは腰を切って左内股の形でフィニッシュ。ヴィエルらしさの溢れた素晴らしい一撃見事決まって「一本」。

【決勝】
丸山城志郎○合技[内股・腰車](3:31)△キム・リマン(韓国)

東京世界柔道選手権2019男子73kg級決勝決勝、丸山城志郎がキム・リマンから内股でまず「技有」
決勝、丸山城志郎がキム・リマンから内股でまず「技有」

丸山が左、キムが右組みのケンカ四つ。待ちの間に応急処置があったか丸山は格段に動けている印象。33秒キムに偽装攻撃の「指導」。丸山が持つとキムは力強く右背負投に座り込むが相手が良く見えている丸山は崩れず、キムは1人で潰れる形になってしまう。丸山左内股に打点の高い右一本背負投の奇襲も見せて快走。2分27秒には相手を横に引きずり出す形の巴投。キム反応良く自ら前転回避も、丸山はここまでの展開で次の技の囮になり得る布石を十分打った印象。2分26秒、丸山巴投の動きを匂わせるなり一転左内股。縦回転を呉れると自ら乗り込んで決定的な「技有」確保。3分30秒には釣り手で前襟を得るなり首に持ち替えながら左腰車。抱え込みと前方への突っ込みがほとんど同時のこの早い技にキム大崩れ、それでも反応良く反転回避を試みるが丸山脚を高く揚げて回旋をフォローし投げ切って「技有」。合技「一本」で丸山の初優勝が決まった

日本代表選手全試合戦評

丸山城志郎(ミキハウス)
成績:優勝


【2回戦】
丸山城志郎○内股(4:00)△パヴェル・ペトリコフ(チェコ)

丸山が左、ペトリコフが右組みのケンカ四つ。丸山出足払で先制攻撃。ペトリコフこれを受けて巴投も丸山良く相手が見えており、体捌き良く回避して動ぜず。初の世界選手権にも緊張の色は薄い。1分57秒丸山腰を引いて逃げる相手を追いこんで場外に出し、出足払で吹っ飛ばす。「待て」の後で技の効果は認められなかったが直後場外の「指導」。
1分20秒、ペトリコフが背中を抱くと丸山腰を差し合う形で作用足を入れ、いったん着いてから位置を調整して挙げなおし左内股「技有」。残り0秒、相手の横移動のタイミングに合わせて丸山が左内股。外に逃げる相手の体を脚を開いて追いかけ、腰で押し込むように投げ切り「一本」。

【3回戦】
丸山城志郎○内股(2:48)△アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)

丸山が左、ゴンボッチ右組みのケンカ四つ。丸山が釣り手で前襟を持ち、引き手で袖を求めるとゴンボッチ片手のまま巴投に逃げ、開始10秒偽装攻撃の「指導」。以後もゴンボッチはまことも組み合わず、組み手争いと先手の捨身技による掛け潰れで時間を使う。丸山は姿勢良く組み、飛び込みの内股、背中を抱えて来た相手の釣り手から巧みに肩をずらして内股、内股のステップを餌にしての巴投に出足払と焦らず、着々攻める。2分3秒技の出ないゴンボッチに「指導」。粛々攻めを積んで相手との間合いを確かめた丸山、2分30秒過ぎに勝負に出る。まず腰を切るフェイントを見せるとゴンボッチ右膝をついて腹を出し防御、この立ち際に左内股。相手が低く構えて返さんとすると、耐えさせておいて軸足の位置を直し、力を籠めなおして縦に高く足を挙げる。外側に崩れた相手に体を寄せて投げ切り、「一本」。

【4回戦】
丸山城志郎○優勢[技有・巴投]△サルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)

丸山が左、ヌリラエフ右組み、この試合もケンカ四つ。ヌリラエフ右内股に隅返と軽い技で先に手数を積み、次いで釣り手で後襟を握って振り回しに掛かる。雑ながらかなり力がある模様、1分18秒手数で後手を踏んだ体の丸山に消極的との咎で「指導」。ここまではヌリラエフが優勢、情勢不穏だが、丸山は直後組み際の左内股で高々浮かせ会場はどよめき。投げ切れなかったがこの一発で空気は一変、一転試合場は丸山の空間となる。1分46秒にはヌリラエフに偽装攻撃の「指導」でスコアも戻し、丸山粛々技を積む。両襟で寄り、足で崩し、残り1分を過ぎたところで引き手で袖、釣り手で奥襟を掴む完璧な形を得る。内股を警戒して腰を引く相手に対し、出足払で耐えさせてスタンスを広げさせるとノーステップで左足支点の巴投に潜り込む。ヌリラエフが崩れると両足でフォローし「技有」。「待て」が掛かった時点で残り試合時間は33秒、このまま戦い切ってタイムアップ。丸山は終始落ち着いていた。

【準々決勝】
丸山城志郎○内股(3:17)△モハメド・アブデルマウグド(エジプト)
丸山、今大会初めての左相四つ。しかしパワー派のアブデルマウグドはまず右で奥襟を掴み、次いで左組みにスイッチする面倒な選手である。さっそく右で丸山の背中を叩くが、丸山が釣り手を激しく振ってこれを外し右一本背負投の形で軽く腕を差すと、続いて襲うであろう投げを怖れたアブデルマウグドが自ら潰れて36秒偽装攻撃の「指導」。アブデルマウグドはまたもや右構えで奥襟を掴み、次いで後帯を掴むと左で丸山の脇を抱え込む。あるいは後帯を握り続けた咎の「指導」あるかと思われたが、さすがに危ないと感じた丸山が潰れ、丸山の側に防御姿勢の「指導」。以後も丸山は、体の力が強く、組み手をブンブンスイッチしてくるアブデルマウグドをやや持て余す感あり。しかし相手のやり口を掴んだ模様、残り1分半から突如ペースを上げ、襟と袖をしっかり得ての巴投、切れ味ある左内股と取り味のある技を連発。この内股でアブデルマウグドを場外まで弾き出す。そして3分17秒、背を抱えて来た相手の内側に体を入れると両手で左片襟を握る形から左内股。少々無茶な形だがなにしろ足が高く上がり、その打点の高さだけで相手は崩れる。横に出て、腰を押し込んで投げ切り見事な「一本」。丸山快勝、抜群の投げ勘だった。

【準決勝】
丸山城志郎○GS技有・浮技(GS3:46)△阿部一二三

大一番。両者の名前がコールされると日本武道館は地鳴りのような大歓声。この試合は丸山が左、阿部が右組みのケンカ四つ。両袖から、挑む立場の阿部が思い切りよく先制攻撃。相手を動かしての出足払、さらに釣り手で前襟を得ると右大外刈で外足を封じ、次いで本命の右背負投に踏み込む。高く上がった丸山が膝から落ちて投げ切れなかったが、非常に良い攻め。直後の48秒丸山に「指導」。
好試合が期待されたがここでアクシデント。丸山が指を押さえ、曲げ伸ばしして少々異様な気配。攣ったか、あるいは負傷か。試合が再開されてもその左手は開いたままで、掴む動作が出来ない。阿部が前襟を持って突進すると持てない丸山は潰れ、再び同じ絵が繰り返された1分48秒には偽装攻撃で2つ目の「指導」が与えらえれる。試合時間実に2分12秒を残して、丸山は後がなくなってしまう。しかもどうやら序盤の背負投を受けた際に膝を負傷した模様、足を激しく引きずって、歩くのがやっとの様子。

指の負傷で掴めず、膝の怪我で跳ねれず。羽をもがれた丸山は絶体絶命。しかし丸山前に出るとなんと左内股を一撃、さらに丸山の前進に合わせて巴投に飛び込む。これは当然ながら足を伸ばせず、予期した阿部はカウンターで大内刈を合わせて「技有」獲得。決定的なポイントだが、映像チェックのケカこれは取り消し。追い込まれた丸山はしかしユラリと前に出、残り31秒には再び左内股、なんと阿部の体が僅かに浮く。丸山は片手の左内股で再び跳ね上げ、試合はGS延長戦へ。

あと1つ「指導」を取ればいい阿部は大内刈を絡ませながら前へ。しかし丸山表情を変えずに35秒には左内股を2連発。「はじめ」が掛かると脚を引きずりながら、目で阿部を圧して前進。その幽鬼のようなたたずまいに知らず阿部は下げられ、徐々に展開は丸山へ。阿部は丸山の両襟を小外刈で切り返して伏せさせ、袖を絡ませて前に出て場外に弾き出してと的確に引き出しを開けるが、このやや青ざめた顔色のまま、しかし表情は変えずに歩いてくる丸山の迫力に気圧されている色が徐々に濃くなる。GS2分55秒には丸山が内股で大きく浮かせ、直後阿部に防御姿勢の「指導1」。

しかし丸山には具体的に取る技がない。指の負傷で掴み続けられず、膝の負傷で内股は跳ね上げられず、巴投は持ち上げられない。

ここで丸山が採った策は、浮技。釣り手で背を抱え、相手が腰を引いたところに体ごと回旋運動を呉れ、引き手を右片襟に入れてこの運動方向をフォロー。掴めないなら抱える、跳ねられないなら捨てる、崩せないなら体重を使う。もともと巴投から脚を払う動きが得意な丸山にとっては、実はこの動きは慣れ親しんだもの。右前隅に崩され、体重の掛かった右足を止め刈られた阿部は体側から落下「一本」。競技史上に残る熱戦は丸山の勝利に終わった。

【決勝】
丸山城志郎○合技[内股・腰車](3:31)△キム・リマン(韓国)

※前述のため戦評省略

阿部一二三(日本体育大3年)
成績:3位


【2回戦】
阿部一二三○背負投(0:34)△アルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)

右相四つ。阿部が引き手を持つとガイテロ=マルティン腰を引いてすぐ切り離し容易に持たせない。阿部引き手で襟を握ると片襟に差しながら打点高く右背負投。舞った相手の体が外側に逃げたが体を突っ込んで投げ切り「一本」。ここまで僅か34秒、圧勝。

【3回戦】
阿部一二三○袖釣込腰(0:41)△マー・ドゥアンビン(中国)
右相四つ。マーが引き手から手を出して組まんとするが、一瞬後には阿部が両袖を掴んでいる。右釣り手はマーに絞り込まれている形だが、阿部絞りがきついとみるや持たせたまま小内刈で間合いを整え、右袖釣込腰「技有」。ここまで僅か12秒。阿部、26秒に両袖で押し込まれて膝をついてしまい「指導」1つを失うが大勢に影響なし。39秒、似た両袖での潰し合いから、立ち上がらんとした相手の股中に潜り込み再度の袖釣込腰「一本」。

【4回戦】
阿部一二三○大外刈(3:27)△マッテオ・メドヴェス(イタリア)
右相四つ。身長高く手足長く、パワーのあるメドヴェスは相当厄介な相手。奥襟を先に叩き、組み手を左にスイッチしてと荒いが勢いのある柔道、しかも組み合わず、ベースは手先を絡み合わせて後重心の組み手争い。阿部、危なげないもののやりにくそう。具体的にこの選手を投げるのは大変という印象。残り39秒、阿部組み際に右袖釣込腰に飛び込むがメドヴェスの体が長く、懐内で力を伝えきれぬまま空転。しかし続く残り33秒、メドヴェスの出際を狙って組み際の右大外刈。相手の手が出て来た瞬間、自分が持つ前にもうモーションを起こしていたのではとすら思われる高速の一撃。後重心の相手を的確に捕まえる「後ろ技」。メドヴェスここまでの厄介さが嘘のように一瞬で畳に埋まり「一本」

【準々決勝】
阿部一二三○優勢[技有・大内刈]△ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)

初戦で9分41秒掛けてアン・バウル(韓国)から金星、2戦目はでバグラティ・ニニアシヴィリ(ジョージア)を7分52秒かけて撃破、そして3回戦でタル・フリッカーを狩った大物食いの「体力お化け」、この日序盤戦主役級の活躍を見せたヨンドンペレンレイを畳に迎える一番。この試合は右相四つ。力勝負を挑むヨンドンペレンレイを両袖で捕まえんとする阿部であったが、横変形の組み合いからヨンドンペレンレイが引き手で腋を抱えるとさすがにこのままというわけにはいかずに自ら潰れ、50秒偽装攻撃の「指導」。阿部は片手の袖釣込腰にこの技を囮に使ったフェイントの小内刈、片襟の背負投、片袖の右袖釣込腰と次々手立てを尽くし、ポイント級の投げを入れ続けるがヨンドンペレンレイ異常な際の強さでいずれも回り切らずに回避。むしろ表情に生気を湛えて前に出続け、釣り手を背中に回して阿部を包みに来る。この投げる技はないが圧力抜群、防御は粗いが絶対飛ばないというのがこの日のヨンドンペレンレイの長時間試合の所以。
手立てを尽くした阿部だがさらにもう1つ引き出しを開け、ヨンドンペレンレイが背中を叩くと体を沈ませ、引き手で横帯を掴んだ座り込みの大内刈。絶対に反転回避を許さぬ体の技であったが、崩れたヨンドンペレンレイなんと顔を回してやはり回避、腹ばいに落ちて「待て」。
ここでヨンドンペレンレイが顔面から出血し、試合は一時中断。ここで阿部が何を考え、どの引き出しを開けるかが見もの。再開後、阿部が採った手は再び引き手で後帯を握っての抱きつき大内刈。前段の一撃の手ごたえを足掛かりに、今度は手を後帯まで進め、そして刈り足を高く揚げての追い込み。一段強まった上半身の拘束、そして下半身の崩しにヨンドンペレンレイついに陥落「技有」。残り時間はこの時点で4秒、阿部、難敵を素晴らしいチョイスで突破。

【準決勝】
阿部一二三○GS技有・浮技(GS3:46)△丸山城志郎
※前述のため戦評省略

【決勝】
丸山城志郎○合技[内股・腰車](3:31)△キム・リマン(韓国)

※前述のため戦評省略

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