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優勝候補は日本、各国戦力と対フランス戦の様相を読む/東京オリンピック柔道競技男女混合団体戦プレビュー

<写真は2019年東京世界選手権時。同じ日本武道館で行われた>

まずはルールの概要を載せているのでご確認いただきたい。2021年世界選手権に準拠したものだ。五輪は「階級落ち」出場枠が「1階級上まで」から「2階級上まで」に改められている。

ルール

・6人制。競技順はラウンドごとに変更。
・試合時間、ルールとも個人戦と同一。 ※引き分けなし
・6人全員揃えられるチームのみエントリー可。
 ※競技中に「欠」が出た場合は、最低4名までで試合出場が可能。
・勝敗が決した(4点先取)時点で試合終了。 ※以降の試合は行われない
・勝利数が並んだ場合(3-3)、代表戦を行う。 ※抽選で1試合を選んでの再戦、欠場枠の場合は不戦負け
・トータル12名登録可能。男女3名ずつの6名+補欠選手6名
・本来の階級の2階級上まで出場可。
・プラス2キロまでの増量が認められる。
・「欠」がある場合は、試合開始の時点でスコアに反映しておく。異なる階級で「欠」がある場合は相手チームに1点付与(例:1-0)、同じ階級で「欠」がある場合は双方得点なし(0-0。この場合試合終了の条件は3点先取となる)

<ラウンドごとに対戦順は変わる。1回戦は男子90kg超枠からスタート。>

各枠の出場可能階級

男子
73kg  → 60kg級、66kg級、73kg級
90kg  → 73kg級、81kg級、90kg級
90kg超 → 90kg級、100kg級、100kg超級

女子
57kg  → 48kg級、52kg級、57kg級
70kg  → 57kg級、63kg級、70kg級
70kg超 → 70kg級、78kg級、78kg超級

※男子は73kg級と90kg級、女子は57kg級と70kg級のみ2つの枠に出場可能。

メンバー予想

ここでは各国の予想オーダーとチーム事情を、概ね戦力、優勝可能性の高い順に紹介する。優勝候補は世界選手権を4連覇中の日本。全ての枠で穴がなく、大野将平の73kg枠は相手に関わらず得点が期待できる。次いでそのライバルとなるのがフランス。女子は全枠に優勝クラスの強豪を揃えているほか、男子90超枠には大駒テディ・リネールが座っている。以降は選手層が厚いロシア、韓国が続き、ドイツ、ブラジル、イスラエル、オランダまでがメダル圏内。

日本

大野将平

予想メンバー
57kg  芳田司(阿部詩)
73kg 大野将平(阿部一二三)
70kg 新井千鶴(田代未来)
90kg 向翔一郎(永瀬貴規)
70kg超 素根輝(濵田尚里)
90kg超 原沢久喜(ウルフアロン)

特記事項
・全枠1階級下の選手も強力 ※序盤戦は階級が下の選手を使う可能性あり
・90kg枠のみ一段力が落ちる(決勝も永瀬貴規を起用する可能性あり)

フランス

テディ・リネール

予想メンバー
57kg サハ=レオニー・シジク(アモンディーヌ・ブシャー)
73kg ギヨーム・シェヌ
70kg マルゴ・ピノ(クラリス・アグベニュー)
90kg アクセル・クレルジェ
70kg超 ホマーヌ・ディッコ(マドレーヌ・マロンガ)
90kg超 テディ・リネール

特記事項
・明確な戦力の穴は73kg枠のみ
・90超枠にテディ・リネール
・女子は全枠極めて強力かつ1階級下の選手も強力 ※序盤戦は階級が下の選手を使う可能性あり
・クラリス・アグベニューは意外と70kg枠は厳しい ※バクー世界選手権で70kg級の中堅選手・サビナ・ゲルチャクに敗戦

ロシア(ロシアオリンピック委員会)

ミハイル・イゴルニコフ

予想メンバー
57kg ダリア・メジェツカイア
73kg ムサ・モグシコフ
70kg マディーナ・タイマゾワ
90kg ミハイル・イゴルニコフ
70kg超 アレクサンドラ・バビンツェワ
90kg超 タメルラン・バシャエフ

特記事項
・全員がメダルに絡むクラスの強豪
・70kg超枠は階級落ち

韓国

アン・チャンリン

予想メンバー
57kg キム・チス
73kg アン・チャンリン
70kg キム・ソンヨン
90kg ガク・ドンハン
70kg超 ハン・ミジン
90kg超 キム・ミンジョン

特記事項
・男子は全員がメダルクラス、女子も階級が嵌まり水準以上の力あり
・韓国チームは日本相手には常以上の力を出す傾向あり

ドイツ

アナ=マリア・ヴァグナー

予想メンバー
57kg テレザ・シュトル
73kg イゴール・ヴァンドケ
70kg ジョヴァンナ・スコッチマッロ
90kg エドゥアルド・トリッペル
70kg超 アナ=マリア・ヴァグナー(ヤスミン・グラボフスキ)
90kg超 ヨハネス・フレイ

特記事項
・全体的に穴がなく強力
・70kg超枠はヤスミン・グラボフスキではなく、アナ=マリア・ヴァグナーの可能性大
・ドイツは伝統的に団体戦が強く、個人戦以上の力を出す選手が多い

ブラジル

ラファエル・シウバ

予想メンバー
57kg ラリッサ・ピメンタ
73kg エドゥアルド・バルボサ
70kg マリア・ポルテラ
90kg ラファエル・マセド(エドゥアルド=ユウジ・サントス)
70kg超 マイラ・アギアール(マリア=スエレン・アルセマン)
90kg超 ラファエル・シウバ

特記事項
・全体的に穴がないが、大駒は超級枠のみ
・57kg枠は階級落ち ※リオ五輪王者のラファエラ・シウバがドーピング違反のため欠場
・マリア=スエレン・アルセマンは昨日負傷棄権。出場は難しいはず。

イスラエル

サギ・ムキ

予想メンバー
57kg ティムナ・ネルソンレヴィー
73kg トハル・ブトブル
70kg ギリ・シャリル
90kg リ・コツマン(サギ・ムキ)
70kg超 ラズ・ヘルシュコ
90kg超 オール・サッソン(ペテル・パルチク)

特記事項
・全体的に階級の上位陣が揃っている ※女子70枠、女子70超枠のみ一段落ちる
・90kg枠はサギ・ムキ、90kg超枠はペテル・パルチクの可能性あり
・女子70kg級のみ階級落ち

ウズベキスタン

ダヴラト・ボボノフ

予想メンバー
57kg ディヨラ・ケルディヨロワ
73kg ヒクマティロフ・ツラエフ
70kg ファランギズ・ホジエワ
90kg ダヴラト・ボボノフ
70kg超 グルノザ・マトニヤゾワ
90kg超 ベクムロド・オルティボエフ

特記事項
・男子は強力
・女子は全枠階級落ち確定 ※グルノザ・マトニヤゾワは70kg級の強豪も70kg超枠での出場

モンゴル

サイード・モラエイ

予想メンバー
57kg ドルジスレン・スミヤ
73kg ツェンドオチル・ツォグトバータル
70kg ボルド・ガンハイチ
90kg ガンツルガ・アルタンバガナ(サイード・モラエイ)
70kg超 オトゴン・ムンフツェツェグ
90kg超 ウルジバヤル・デューレンバヤル

特記事項
・男子は全階級強力も、女子は57kg級以外は階級落ち
※加えてドルジスレン・スミヤは不調
・90kg枠でサイード・モラエイを起用する可能性あり

イタリア

ファビオ・バジーレ

予想メンバー
57kg オデット・ジュッフリダ
73kg ファビオ・バジーレ
70kg マリア・セントラッキオ
90kg クリスティアン・パルラーティ
70kg超 アリーチェ・ベッランディ
90kg超 ニコラス・ムンガイ

特記事項
・男女ともに好選手は揃っているが階級噛み合わず
・73kg級以外は階級落ち

オリンピック難民選手団

ヤヴァド・マージュブ

予想メンバー
57kg アンダ・アルダス
73kg アフマド・アリカイ
70kg ムナ・ダフク
90kg ポポレ・ミセンガ
70kg超 ニガラ・シャヒーン
90kg超 ヤヴァド・マージュブ

特記事項
・マージュブはもとイラン籍の強豪
・勝敗は別として応援したいチーム

展望・準々決勝~準決勝

優勝候補の日本はまず準々決勝でドイツと対戦することになる。盤面全体に有力選手を並べた強豪チームだが、日本は90kg枠以外では明確に戦力が上回っておりまず敗れることはない。

<対ロシア戦の読み。日本は決勝点をどこで挙げるかが課題だ。※準決勝は73kgからスタート予定。>

続く準決勝には恐らくロシア(ROC)が勝ち上がってくると予想する。まずはここが第1の山場だ。確実に勝利が期待できるのは73kg枠と70kg超枠、そしてやや落ちて57kg枠。反対に相手側にミハイル・イゴルニコフが置かれる90kg枠は高い確率で失うと計算しておくしかない。

そうなると事前に見込める点は日本3にロシア1。ここまで見るとそれ程厳しくないように思われるが、残る2枠は70が新井千鶴vsマディーナ・タイマゾワ。個人戦での死闘が記憶に新しい競ったカードである。そしてもう1枠は原沢久喜vsタメルラン・バシャエフ。こちらも確実に勝てるとは言えない強敵だ。仮にこの2枠を落とした場合は抽選での代表戦となり、90kg枠になる可能性もある。よって勝負どころは前述の競った2枠。最低でもどちらかを取って代表戦に持ち込むことなく、本戦で勝負を決めてしまいたい。

展望・3位決定戦

3位争いはともに上側の山に入った3チーム、ロシア、ドイツ、韓国が好配置で有利。ロシアは仮に日本に敗れても3位決定戦で対戦するのはイスラエル、オランダ、ブラジルのいずれか。どこと戦っても戦力差があり、まず敗れることはないはず。高確率で銅メダルが期待できるだろう。

続いて上側の山の敗者復活戦で対戦するであろうドイツと韓国。この勝者は反対側の準決勝敗退チームと3位決定戦で対戦するが、ここに降りてくるのはブラジルかオランダ。チーム力としてはいずれと戦ってもドイツ、韓国に分があると予想される。よってこの上側の山の敗者復活戦こそが事実上の3位決定戦。女子はドイツ、男子は韓国が優位だ。競っているのはエドゥアルド・トリッペルとガク・ドンハンが対戦する90kg枠とドイツが階級落ちのアナ=マリア・ヴァグナーを起用するであろう70kg超枠。いずれもドイツが勝利する可能性が高いと読むが、ここの結果次第で勝敗が決するはずだ。なお、団体戦は毎回個人戦で結果を出せなかった選手のリベンジの場としての意味合いが濃い。個人戦で勝利した選手は勿論だが、これらリベンジ組の活躍には一際注目だ。

展望・決勝

<決勝の読み。鉄板の基礎点は日本、フランスともに「1」。勝敗揺れる「?」枠がカギを握る>

決勝の相手はまず間違いなくフランスになる。今場合双方が事前に見込める点は日本の73kg枠とフランスの90kg超枠。残りは日本が70kg、70kg超が大枠優位、同様にフランスは90kgが優位ということになる。これを仮にそのまま点数とすると、日本が3、フランスが2となる。ただし70kgは実力が競っており、70kg超も最近対戦がなく読み難い。そして、残る57kg枠は芳田vsサハ=レオニー・シジクという極めて力関係が拮抗しているカードだ。シジクの個人戦の負傷の程度次第ではアモンディーヌ・ブシャーになる可能性もあるが、恐らくシジクが出てくるはず。間違いなくここが勝負どころ。ここを落としてほかが概ね実力通りならば得点は3対3の同点。今度もテディ・リネールの90超枠を抽選で引いてしまう危険があるため、できれば本戦で決着を付けてしまいたい。なお、勝てる力関係の勝負を確実にものにすることが重要であることは言わずもがなである。ここまで金9、銀1、銅1と非常に好調な日本チーム、この勢いに乗って団体戦も制して最高の形で今大会を終えたい。

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