[随時更新]グランプリ・ポルトガル2022 日本代表選手勝ち上がり速報
文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta
60kg級
中村太樹(国士舘大1年) 3位
【1回戦】中村太樹〇小外刈(2:11)△アシュリー・マッケンジー(イギリス)
中村右、マッケンジー左組みのケンカ四つ。マッケンジー背中を持って潰し、53秒中村に防御姿勢の「指導」。マッケンジー背中、腋裏、両袖と釣り手の位置を変えながら巴投に左袖釣込腰と打つが中村慣れ始め、1分過ぎからは右小内刈、出足払、右背負投とペースを掴む。2分にはマッケンジーに偽装攻撃の「指導」。直後マッケンジーが体を振って左袖釣込腰も、中村起こりに右小外刈を合わせ、奥足まで刈って「一本」。
【2回戦】中村太樹〇GS縦四方固(GS0:58)△ジョン・スンビョン(韓国)
中村が右、ジョンが左組みのケンカ四つ。中村の寝技がしぶとく、強い。ジョンは釣り手で前襟を低く持っては右への肩車、右への一本背負投と浅い技で掛け潰れを繰り返すが、都度中村すばやく寝技に食いつき、実にしつこく攻めを繰り返す。肩車は抱き込んで潰し、脇を差して容易に立たせず、右一本背負投は腕を固め、正対して逃れる相手に腰を切ってのパスを繰り返して食らいつき続ける。このパターンで攻め続けるとジョン激しく疲労。本戦が終了すると正座して帯を正し、なんとか息を整える。GS延長戦、中村は釣り手一本の右体落で崩すと、伏せた相手に食いつき、最後は上体を抱えて引込返の形で縦に回す。絡まれた足を引き抜いて縦四方固、ジョンもはやまったく動けず「一本」。
【準々決勝】中村太樹〇崩上四方固(3:22)△フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
中村右、ガリーゴス左組みのケンカ四つ。ガリーゴスは釣り手上腕、あるいは奥襟を起点に最後は後帯へと握りを変え、滑り込むように引込返と隅返を繰り返す。この捨身技攻撃に対して中村が徹底的に寝勝負を挑むという様相で試合が進む。ガリーゴスは背中を持って圧し、中村が右背負投を仕掛けるとこれも後帯を握っての隅返に変換してあくまで捨身技で勝負。2分28秒には後帯を握り続けた咎で「指導」を貰うも、この方針は揺るがず。直後ガリーゴスまたもや後帯を握って隅返、しかし攻防一致で被り返した中村今度は逃がさず横四方固で抑え込む。激しく抗う相手を最後は後襟を握って畳に押し付け、崩上四方固の形で抑え切って「一本」。
【準決勝】中村太樹△合技[横落・横落](2:10)〇バラバイ・アガエフ(アゼルバイジャン)
中村右、アガエフ左組みのケンカ四つ。アガエフは釣り手で上腕裏を握り進退。中村右背負投もアガエフ振り返し、寝勝負には素早く腕挫十字固で応じる。これまでの相手とは一段厳しさが違う印象。アガエフは変わらず釣り手で上腕裏を握り、相手の右へ得意の横落を繰り出す、中村1度目はかわしたが、2度目をスピード速く、小さく入れられると滑り落ちて僅かに体側を着いてしまい、1分23秒「技有」。中村が右小内刈、右背負投から右体落に潰れる攻防を経た2分10秒、アガエフ釣り手上腕裏からみたび横落。中村が畳に落ちると今度は大きく展開して回し、「技有」。
【3位決定戦】中村太樹(国士舘大1年)〇GS縦四方固(GS2:18)△エンフタイワン・スミヤバザル(モンゴル)
ともに右組みの相四つ。序盤はエンフタイワン・スミヤバザルが引き手で一方的に袖を得る場面が目立つ。組み手争いを縫って左袖釣込腰で2度中村に膝を着かせ、1分39秒中村に「指導」。中村右小内刈で大きく崩して反撃の狼煙。エンフタイワン・スミヤバザルが奥襟を叩くと横変形にずれて噛み殺し、残り1分になるとこの体勢から右小内刈、左袖釣込腰と連発してリズムを掴む。試合はこのままGS延長戦へ。組み手争いの中、両袖を絞って守ったエンフタイワン・スミヤバザルにGS48秒ブロッキングの「指導」。横変形を企図する中村とこれを嫌うエンフタイワン・スミヤバザルという形で組み手が膠着し、GS1分29秒双方に「取り組まない」咎で「指導2」。続く展開でエンフタイワン・スミヤバザルが左腰車もすっぽ抜けて自ら大きく崩れる。中村素早く寝技に食いつき、焦った相手の立ち際に合わせて腕を抱えての引込返。綺麗に回し、足を引き抜いて上半身に跨り、がっちり縦四方固に抑え込む。エンフタイワン・スミヤバザル動けず「一本」。
66kg級
福田大和(平田高3年) 5位
【1回戦】福田大和〇横四方固(3:29)△ムフリディン・ティロヴォフ(ウズベキスタン)
ともに右組みの相四つ。互いに引き手、釣り手の位置を前襟、袖、と変えながら極めてテンポの速い組み手争い。ティロボフ奇襲の左背負投を見せるが福田はすぐさま得意の寝技に持ち込んでプレッシャーを掛ける。福田は巴投から腕挫十字固に繋いで快走。ティロボフが右袖釣込腰に掛け潰れ、福田が素早く寝技に持ち込む攻防を受けた1分45秒、ティロボフに偽装攻撃の「指導」。福田片襟の大内刈、ティロボフ両手で背中を抱えての大内刈と攻め合ったのち、福田が打点高く左袖釣込腰。ティロボフ自ら一回転して膝から落ちて逃れるも、福田は立ち・寝に継ぎ目がない。既に左腕を抱え込んでおり、これを起点に寝技を展開。回し、頭側から抑え、右手で下穿きを押さえて巧みにコントロール。最後は横四方固「一本」。
【2回戦】福田大和〇崩袈裟固’3:37)△アレクサンダー・ショート(イギリス)
ともに右組みの相四つ。ショート右小内巻込で先制攻撃、しかし福田すぐさま寝技に持ち込んでしぶとく攻める。以後も福田は寝勝負志向。片襟の大外刈で崩し、右背負投で潰し、徹底的に寝技で取りに掛かる。ショートやや慣れ始めた気配も激しく疲労、2分4秒には片襟でのあおりを繰り返した末に「指導」を貰う。組み手争いの膠着を経た終盤、福田が両手で右襟を握っての右背負投。ショートが伏せると胴を抱え、相手の体を超えて右に降りて横四方固。そのまま右腕を抱え込んで崩袈裟固に移行、盤石の「一本」。
【準々決勝】福田大和△GS反則[指導3](GS2:41)〇フレディー・ヴァイツェネッガー(スイス)
ともに右組みの相四つ。激しい組み手争いを縫ってヴァイツェネッガーが組み際の捨身技で攻め、福田がこれを外して寝勝負に食いつく展開。だが前段の2試合で警戒されたかヴァイツェネッガーの対応が早くなかなか獲るには至らず。1分41秒、引き手袖、釣り手片襟で引込返の形で潰れた福田に偽装攻撃の「指導」。以後もヴァイツェネッガーが片襟の背負投に巴投と組み際の技で攻め、福田もこれに背負投、小内刈、大外刈と片襟技で応じるため様相はやや刹那的、なかなか展開が積みあがらない。試合はこのままGS延長戦へ。延長開始早々、福田が右内巻込。伏せた相手を回し直して背中を着かせたが、これはノーポイント判定。GS1分0秒、福田胴を抱えながら大内刈に打って出た流れで不用意に畳を割ってしまい、巴投で展開を切るも場外の「指導2」。GS1分56秒、巴投に潰れたヴァイツェネッガーに偽装攻撃の「指導」。福田、展望は暗くないが、ここで引き手袖、釣り手片襟から流れた形の右小内巻込で転がした際に、手が下半身を触ってしまう。映像チェックの結果福田に足取りの咎で「指導3」。福田、手が噛み合わない相手に最後までリズムを作れず、思わぬ敗戦となった。
【敗者復活戦】福田大和〇内股(2:51)△ゴンカロ・オリヴェイラ(ポルトガル)
ともに右組みの相四つ。気持ちを立て直した福田動き良く、内股、片襟の右大外刈に大内刈と立て続けに技が出る。オリヴェイラ組み手で粘るが、福田が両袖のディフェンスを内股で剥がした直後の1分4秒、消極的試合姿勢の「指導」。直後福田は相手の守備を利用して再び両袖を作り出すと、左から「モラエイ」様の肩車に侵入して1分13秒「技有」確保。以後もしつこい寝技で圧を掛けて相手の気力体力を削り取る。残り1分に迫らんとするところで引き手で袖を持ち、奥襟を持ちながら大内刈。これで頭の下がった相手がなんとか顔を上げると、この動きに合わせて思い切り右内股。ガードのない状態で食ったオリヴェイラ堪らず一回転「一本」。
【3位決定戦】福田大和△谷落(1:13)〇ボグダン・イアドフ(ウクライナ)
福田が右、イアドフ左組みのケンカ四つ。イアドフ長い腕を振って背中を叩き、後帯を引っ掴む。福田潰れて「待て」。イアドフ続く展開も背中を叩き、引き手も背中に回して左小外掛。福田右内股に切り返すがこれは相手の土俵、イアドフ股中で捌いて場外で反転、大過なし。続く展開もイアドフ掌合わせを経て背中にアプローチ。福田は引き手で袖、釣り手で横襟を掴んで右内股も懐の深さを攻略出来ず、滑り潰れる。イアドフ、釣り手を背中に回してみたび後帯を掴む。左小外掛様に引っ掛けて体を捨てると、まともに力を受けた福田は真裏に落下。無念の「一本」。
73kg級
田中裕大(国士舘大2年) 1回戦敗退
【1回戦】田中裕大△内股(0:57)〇イド・レヴィン(イスラエル)
田中が左、レヴィンが右組みのケンカ四つ。長身のレヴィン釣り手を奥襟、背中と移してまず左大外刈。裏に抜けた田中は背後を取られたが、振り向くなり左小内刈で崩して体勢を立て直す。レヴィン釣り手を背中から今度は後帯を握るところまで進め、体を屈した田中を引きずって右内股で攻める。田中が伏せて「待て」。続く展開、レヴィンは釣り手で奥襟を掴むと、いったん足を股中に突っ込む「サリハニ状態」で固定。次いで釣り手を後帯に移し、ゆるりと右内股に打って出る。引き手を畳に着き、長い脚で持ち上げる「脚だけの内股」。しかしこの長さを田中捌けず頭頂部を畳に着いてしまい、そのまま縦に一回転。背中から落ちて「一本」。田中は動きが堅かったが、そもそもの地力に差があった印象。ワールドツアー初挑戦は厳しい結果に終わった。
81kg級
老野祐平(帝京平成大2年) 3位
【2回戦】老野祐平〇大外刈(1:56)△ケル・ベルリナー(アメリカ)
老野左、ベルリナー右組みのケンカ四つ。老野釣り手を得ると、左出足払を交えながら前に出て引き手を狙う。二本持つとまず左小内刈、さらに体を揺すって間合いを作り出すと鋭い左体落一撃。これは綺麗に決まって30秒「技有」。1分28秒技の出ないベルリナーに「指導」。続く展開、老野は二本持つと左出足払に「大内・小内」で体勢を整え、またも体を揺すって相手の握りを薄くするなり左大外刈。引っ掛け、真裏に刈り込むお手本のような一撃、みごと決まって「一本」。
【3回戦】老野祐平〇優勢[技有・内股]△トート・ベネデク(ハンガリー)
老野左、トート右組みのケンカ四つ。トート釣り手で思い切り背中を叩くこと3度、老野が二本使って丁寧に前襟を持って対応すると左へ肩車を放って展開を切る。さらに片手の右内股、相手の左への肩車と掛けやすい技を連発。老野慣れ始めてしっかり捌くが手数の先行を許した格好、1分22秒消極的試合姿勢の咎で「指導」。これを受けた老野左小内刈で伏せさせ、寝技でしっかり攻めてまず展開を留保。続いて引き手で袖の外側を得て圧を掛け、軸足を外に回しての左内股、さらに左小内刈と技を積む。しっかり組まれて手が詰まって来たトート、窮して左組みにスイッチ。まず左で首裏を掴んで圧力、次いで右小外掛を仕掛ける。老野チャンスとばかりこれを迎え撃って左内股、着実に決め切って3分25秒「技有」。いったんは「一本」が宣される綺麗な技だった。老野ここで一方的に組ませてしまい極端な防御姿勢の「指導」を失うが、以後は組み勝ち、引き落とし、寝技に持ち込み、後帯と後襟を掴んだままめくり動作で攻め続ける。そのまま時間。
【準々決勝】老野祐平〇GS小内刈(GS5:08)△キム・ジョンフン(韓国)
ともに左組みの相四つ。組み手のうるさいキムは片襟の左背負投を中心に試合を作らんとするが、老野の巧さの前になかなか的を絞れない。老野は組み手と足技を連動させ、極めて安定感高い進退。常に組み手のレベルを上げることを狙いながら、それでいて攻めが止まらない。老野が組み際の左大外刈に、相手の組み際を吸い込んでの左小内刈と立て続けにポイント級の技を見せた1分41秒、キムに消極的試合姿勢の「指導」。老野は組み手の駆け引きほぼすべてに技が連動。釣り手を奥襟、片襟と的確に変えながら、大外刈、小内刈、大内刈、小外刈と具体的に投げを狙った技を出し続ける。キムが時折片襟技と肩車を見せるため反則こそ入らないが、老野が優位を加速させながら試合はGS延長戦へ。延長戦も老野は淡々と攻めを繰り返し、粘るキムの気力体力を削リ続ける。片襟の左大外刈、体を揺すっておいての左小内刈と連発したGS3分24秒にはキムに2つ目の「指導」。キムは襲い来る老野の技を落ち際ギリギリで回避することでなんとか踏みとどまっていたが、老野の左大外刈に大きく崩された直後のGS5分8秒、ついに陥落。老野がまず片襟の左大内刈、次いで同じ形から今度は左小内刈を打ち込むとガクリと崩落。ほとんど間なく、まるで朽木倒を食ったように頭から真裏に落下、「一本」。
【準決勝】老野祐平△合技[隅返・縦四方固](1:23)〇マティアス・カッス(ベルギー)
老野が左、カッスが右組みのケンカ四つ。老野が上から、カッスは下から釣り手を持ち、L字に立ち位置を開いたまま組み合っての攻防が続く。ツト老野が左小内刈、下げられて踏みとどまったカッスはいったん右小外刈のフェイントを入れると、横滑りして老野に正対しながら体を捨てる。左足を流した動きは一瞬浮技を感じさせたが、カッスの狙いは変則の隅返。「両足巴」のように足を屈伸させて持ち上げるのだが、左脚は相手の膕を持ち上げて裏側、右脚は腿を支えて表側。前と後ろから相手を挟みながら持ち上げ、巴投様に真裏にもろとも一回転。老野が綺麗に回って背中から落ち「技有」。カッスは相手の胴体を挟んだままマウントを取る形で着地、そのまま縦四方固に抑え込んで合技「一本」。これぞカッスという異次元の、それでいてよく練られた技であった。
【3位決定戦】老野祐平〇反則[指導3](3:31)△ギルヘルム・シミット(ブラジル)
老野が左、長身のシミットが右組みのケンカ四つ。シミット釣り手で袖を抑えて両袖を志向、ここから片襟に持ち替えて右体落、左への肩車、動きを止めずに腕挫十字固と攻める。続いて釣り手で背中を深く叩いておき、クリスティアン・パルラーティばりの膝つき大内刈を見せるなどかなりの難剣ぶり。しかし老野この技を利してしっかり組み止めて頭を下げさせ、ひきずり、内股様に脚を突っ込みながら腰を切って潰す。直後の1分40秒、シミットに消極的試合姿勢の「指導」。シミットはケンケンの右大内刈に左への肩車、右の外巻込と見せるがいずれも老野しっかり止めて揺るがず。シミット今度は背中と同側の袖を抱える「ケンカ四つクロス」からまず見せ技の右内股、そのまま隅返、流れるように腕挫十字固へと繋ぐが老野しっかり防いで「待て」。そしてシミットのこの寝技への入りが立ち勝負の段階で関節技を施したと判断されて2分26秒「指導2」。一方的リードを得た老野はペースアップ。肘抜きの左背負投に左大内刈と立て続けに良い技を出し、一方的に良い形で組んで前へ前へと体を運ぶ。シミット対応が遅れてあっさり畳を割り、場外の「指導3」。老野、ワールドツアー初出場で見事3位入賞を果たした。
90kg級
岡田陸(国士舘大1年) 1回戦敗退
【1回戦】岡田陸△GS技有・一本背負投(GS0:15)〇ハン・ジュヨプ(韓国)
岡田が右、ハンは左組みのケンカ四つ。岡田序盤は快調。釣り手で前襟を得ると得意の高く刈り上げる右大内刈を連発。投げることこそ出来ないがケンケンで右後隅に大きく追い込むことを続けてペ―スを掴む。46秒、引き手を嫌って切ったハンに「指導」。岡田は大内刈を存分に活用。下げるツールとしてきちんと利用し、ケンケンで追っては場外にハンの体をしっかり置く。岡田がまたもや右大内刈で激しく追った直後の1分12秒には消極的試合姿勢で2つ目の「指導」。しかしこのあたりからハンが慣れ始め、組み手争いを縫っての右袖釣込腰に、岡田の掛け終わりに合わせての左背負投と良い技を積み始める。ハンが右一本背負投を仕掛けた3分11秒には岡田にも消極的試合姿勢の「指導」。ハンは釣り手の絡ませ方を変え始め、岡田の大内刈が届きにくくなってきた印象。試合はこのままGS延長戦へ。開始早々、岡田は両手を使って釣り手で襟を持ち、引き手を求めてツト前へ。しかしハンこの動きに合わせて一気に加速し滑り込むように右一本背負投。岡田クルリと回され「技有」。延長開始早々集中力が切れたエアポケットを狙い、過たず必殺の一撃、ハンの勝負強さが際立った。
100kg超級
中村雄太(東海大1年) 決勝進出
【2回戦】中村雄太〇合技[大内刈・崩上四方固](2:42)△イリネル=バシーレ・チェラル=グリゴラス(スペイン)
中村、超大型のチェラル=グリゴラスともに右組みの相四つ。中村両襟からエントリー、チェラル=グリゴラスが釣り手で奥襟を叩くとこれを落としに掛かるが圧を受けて頭が下がってしまう。この攻防を受けた中村一計を案じて続く展開は引き手から掴み、片襟の右大内刈を仕掛ける、しかしチェラル=グリゴラスはまったく崩れず、釣り手で上腕、引き手で袖を一方的に掴んで圧力。再び体を屈された中村は防戦に全振りだがチェラル=グリゴラスは具体的な技がなく、1分10秒チェラル=グリゴラスにブロッキングの「指導」。中村再び引き手から掴んで片襟大内刈に打って出るが、これを利したチェラル=グリゴラスに引き手で袖をガッチリ掴まれてしまう。奥襟も掴まれた中村なんとかこの引き手を切らんと腕を振り、「小内・大内」で足元を崩しと様々試みるが、切れない。しかしチェラル=グリゴラスやはり技がな、くこれもブロッキングで1分41秒2つ目の「指導」。ブロッキングのみで「指導2」まで積み重なる珍しい展開となる。中村はまたも手を変え、「両襟奥」に近い形で今度は前に引きずり出し、小内刈、大内刈と技を繋ぐとついにこの巨漢が崩落「技有」。中村そのまま崩袈裟固、時計回りに体を捌いて横四方固、崩上四方固と強度を上げながら抑え切り「一本」。相手の対応を見て戦型を的確に変える、中村の戦術眼の高さが際立った一番。
【準々決勝】中村雄太〇大内刈(2:51)△ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)
ともに右組みの相四つ。コカウリまず大内刈を入れ、これをきっかけに釣り手を奥襟、背中と移す。中村の頭が下がるとさらにクロスに持ち替えて、右大外刈、支釣込足と立て続けに打つ。中村膝を着いて頽れ、32秒極端な防御姿勢の「指導」。中村引き手で右襟を狙うが、コカウリ左構えにスイッチして引き手で襲い来る袖を抑え、絞り込んで殺すと釣り手をクロスに入れて圧力。ここから右大外刈、さらに一度離れて再度クロスの右大外刈と技を連発。中村2度目はぎりぎりで足を抜いて回避したがこの際相手の脚に触れてしまい、1分11秒2つ目の「指導」。ここで中村戦型を変え、地力をテコに前に出て接近する戦略を取る。コカウリまたもやクロスに叩くが間合いを詰められて窮屈、反則を嫌って右大外刈を仕掛けるものの中村に突き押されて場外へ。この形が2度続いた2分24秒、コカウリに場外の「指導」。中村勢いを得て前へ、前へ。嫌うコカウリが手先で突き返すと小さい動作で釣り手で首裏を抑え、さらに前へ。コカウリこの袖を掴んで引き落とすが、中村絞らせたまま前に出、間合いを詰めることで相手のアドバンテージを無力化。コカウリが仕方なく釣り手をクロスに降らせると絞らせたまま右大内刈に飛び込む。腰の浮いていたコカウリ受け切れず崩落、「一本」。
コカウリの持ち味は圧力、その生命線は実は引き手による袖の一方な把持。中途で戦い方を変え、これを無力化した中村の判断と引き出しは見事。前戦に続き、中村の戦術眼の高さが際立つ一番だった。
【準決勝】中村雄太〇GS反則[指導3](GS2:58)△シプーツ・リハールト(ハンガリー)
中村右、シプーツ左組みのケンカ四つ。中村がまず出足払で大きく崩して試合がスタート。中村が両襟、シブーツは釣り手を背中に深く入れて圧力を掛ける。中村は頭を下げられたまま、懐内で側面を付けて力を掛ける形で対抗。大内刈で場外まで追い、出足払で膝を着かせ、時計回りに振り崩し、常に相手をコーナーに追い込んで試合を進めて大枠主導権を掴む。しかし見た目頭が下がっているせいか判定が有利に働かない。シプーツは場外を背負わされ続け、時に畳を割るものの反則裁定の気配はなし。シブーツが場外を背負ったまま動きが止まった2分26秒には双方に消極的試合姿勢の「指導」が与えられる。シブーツは下げられながらも釣り手を絡ませて袖を抑え、これを起点に時に奥襟を叩いてしぶとく進退。一方の中村は頭を下げられる場面はあるが、時折腰を切る動作で相手を潰して、展開になかなか差がつかない。このまま本戦4分間が終わる。GS延長戦も同様の展開、互いに担ぎ技を打ち合って崩し合う一進一退、泥沼化の気配が漂う。しかしシブーツが疲れはじめ、釣り手は袖を絞るのみで奥襟を叩けなくなり、これを受けて30秒過ぎからじわじわと中村が前に出始める。前に引きずる動きも交え、歩かされることが増えたシブーツはますます消耗。シプーツが本戦序盤同様コーナーに縛り付けられたGS1分21秒には場外の咎で「指導2」が宣せられる。中村は右体落、右小外刈に右の「小内・大内」と加速、シブーツは散発の担ぎ技でなんとか展開を留保するという格好。中村がまたもや前に引きずり、小外刈、大内刈と仕掛けて場外まで追うとシブーツ背負投に潰れて展開を流す。しかし主審もはやこれまでと判断、この技に偽装攻撃の「指導」を与えて試合終了。中村、みごと決勝へ駒を進めることとなった。
【決勝】中村雄太△肩車(1:32)〇キム・ミンジョン(韓国)
中村右、キムは左組みのケンカ四つ。キム組み合っては体を揺すって中村の握りを薄くし、弾みをつけて右へ肩車、そして左へ背負投と連発。引き手は常に袖の外側を確保して組み手の優位も譲らない。キムが腕一本を抱え込んでの右背負投を放った直後の55秒、中村に「指導」。中村先に組み付くとキムは左背負投を拝み打ち、中村立ったまま受けて振り返すもののなかなかイニシアチブを握れない。中村は釣り手で前襟を握ると応じたキムは引き手で一方的に袖の外側を握り込み、ここで左内股。ケンケンで追い込み、バランスを取りながら下がった中村の動きが止まると、一瞬重心の戻りを待った上で右への肩車に飛び込む。左後隅から右前隅と振られた中村これはついていけず一回転、文句なしの「一本」。