【東京世界柔道選手権2019特集】歴史的混戦続くもついに抜け出しつつあるモラエイ、成績安定の5名がトーナメントの軸・男子81kg級概況×有力選手
階級概況
ここ3年は柔道競技史上稀にみる大混戦、たびたび「優勝候補20人」と評させて頂いた激戦階級である。昨年と比べるとある程度表彰台の顔ぶれは固まってきてはいるが、7月に行われたグランプリ・ブダペストではサギ・ムキ(イスラエル)ら優勝候補と目された上位選手全員が表彰台を逃しており、今もなお下剋上の風が吹き荒れる戦国時代が続いている。前掲「実力推測マップ」では仮にグループを優勝候補、トップグループ、第2グループと3つに分けさせては頂いたが、これはあくまでも1年間を通したアベレージでの話であり、1大会のみに限ればこの序列は限りなく無意味に近い。以下、各グループについて述べていくが、まずはこのことを前提として読んでいただきたい。
実力的に集団から抜けており優勝候補と目されるのは、現役世界王者のサイード・モラエイ(イラン)、ムキ、昨年2位の藤原崇太郎(日本体育大3年)、同3位のヴェダット・アルバイラク(トルコ)、2016年リオデジャネイロ五輪金メダリストのハサン・ハルモルザエフ(ロシア)。この5名は比較的成績が安定しており、今大会でもトーナメントの軸になると予想される。
これに続くのがフランク・デヴィト(オランダ)、マティアス・カッス(ベルギー)らのトップグループ。この枠内だけでも10名以上の選手がいるわけだが、彼らは普段のワールドツアーで表彰台の常連となっている選手たち。そして、第2グループは彼ら強豪を相手に勝利歴がある、あるいは大きな大会でスポット的に戦果をあげた選手たちである。
いずれの選手も力関係を超えて戦果を挙げ得る具体的な武器を持ち、そして少し手を伸ばせばメダルに手が届くこの混戦状態を意識してモチベーション極めて高い。昨年大会では豪快な「一本」連発、好試合が続出した81kg級であるが、今大会も熱戦間違いなし。決勝ラウンドだけではなく後追いでもよいので全試合を見たい、魅力的な階級だ。
有力選手
随時更新。「東京世界選手権完全ガイド」トップページから、81kg級の「有力選手」ボタンをクリックして頂きたい。有力選手をピックアップして、その柔道の傾向と組み手、得意技や実績を紹介する。
シード予想
優勝候補5名のうち3名がトーナメントの下側に詰め込まれ、極端に重心の偏った組み合わせとなった。藤原崇太郎(日本体育大3年)はそのなかでも最も過酷なプールCに置かれ、準々決勝でサギ・ムキ(イスラエル)、準決勝でヴェダット・アルバイラク(トルコ)と対戦予定となっている。昨年大会では組み合わせに恵まれて準決勝までは戦いやすい相手との対戦が続いたことを考えれば、まさに天国と地獄。ここは自らの力を示すチャンスと肚を括るしかない。ただ、そもそもこの階級に関してはどこに置かれても楽ということはない。シード外にもハサン・ハルモルザエフ(ロシア)を筆頭に実力者がひしめき合い、第1シードのサイード・モラエイ(イラン)ですら、シード選手だけでも準々決勝でイヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)、準決勝でマティアス・カッス(ベルギー)とドミニク・レッセル(ドイツ)の勝者と戦わねばならぬ難易度の高さだ。昨年の藤原が奇跡的な組み合わせのエアポケットに嵌ったというわけで、これが現在の81kg級で戦っていくということなのだろう。
とはいえ、これは観客にとっては見どころ盛りだくさんのトーナメントということである。繰り返すが、全試合見逃さず、可能であれば現地での観戦をお勧めしたい。
【プールA】
第1シード:サイード・モラエイ(イラン)
第8シード:イヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)
【プールB】
第4シード:マティアス・カッス(ベルギー)
第5シード:ドミニク・レッセル(ドイツ)
【プールC】
第2シード:サギ・ムキ(イスラエル)
第7シード:藤原崇太郎(日本体育大3年)
【プールD】
第3シード:フランク・デヴィト(オランダ)
第6シード:ヴェダット・アルバイラク(トルコ)