【東京世界柔道選手権2019特集】新井千鶴の3連覇濃厚、強豪各選手の対策どう弾き返すかがみどころ・女子70kg級直前展望
→東京世界柔道選手権2019組み合わせ(公式サイトippon.org内)
エントリーは47名。「概況×有力選手」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。階級の現状と実力推測マップについては「概況×有力選手」、有力選手の得意技や特徴については「有力選手(選手名鑑)」を参照されたい。
ドローの結果、シード外の有力選手はマリア・ベルナベウ(スペイン)とマルゴ・ピノ(フランス)、ジェンマ・ハウエル(イギリス)の3名がプールB、キム・ポリング(オランダ)がプールC、ジュリ・アルベール(コロンビア)がプールDへと振り分けられた。
絶対の優勝候補と目される世界選手権2連覇者・新井千鶴(三井住友海上)は、第1シード選手としてプールAに配された。序盤戦の組み合わせは初戦(2回戦)で昨年、一昨年と世界選手権5位を獲得している密着系パワーファイターのアッスマ・ニアン(モロッコ)、3回戦でともに実力者であるバルバラ・ティモ(ポルトガル)とロクサーネ・タエイモンス(ベルギー)の勝者と、なかなかにタフ。とはいえ、新井の力はこの階級では頭ひとつ抜けており、このレベルに選手に苦戦することはないだろう。準々決勝で対戦するサンネ・ファンダイク(オランダ)もやや変則的なスタイルではあるものの大きく言って腰技系の範疇に収まる選手でそこまでの特異性はなし、問題なく退けられるはずだ。準決勝の相手を決めるプールBは、ベルナベウ、マリア・ポルテラ(ブラジル)、バルバラ・マティッチ(クロアチア)、ピノ、ハウエルと実力者が揃っている最激戦区。相性や組み合わせからはベルナベウが勝ち上がってくると思われるが、この選手の最大のストロングポイントであるパワーで新井は勝っており、これも苦戦を想像することは難しい。問題なく勝ち上がるのではないか。
そもそも、新井に実力で伍するような選手はこのトーナメントにはいない。48kg級のダリア・ビロディド(ウクライナ)の場合のように、各選手なんらか対新井カスタムの作戦や新技を用意して挑んでくると考えられ、それをいかに新井が弾き返すのかがきょうのみどころと考えていいだろう。また、新井は昨年来、組み手や技構成の面で大きな進化を遂げており、それが世界選手権という大舞台でどのように発揮されるかも注目したいポイント。よほどのことが起こらない限り新井の優勝自体は確実。階級の現状を考えるならば「新井時代」が今後も続く可能性が高い。絶対王者として全選手のターゲットとなって迎える今大会で、どのような戦いぶりを見せてくれるのかにも注目だ。
有力選手の配置、各プールのひとこと展望は下記。
【プールA】
第1シード:新井千鶴(三井住友海上)
第8シード:サンネ・ファンダイク(オランダ)
有力選手:アッスマ・ニアン(モロッコ)、バルバラ・ティモ(ポルトガル)、ロクサーネ・タエイモンス(ベルギー)、オニックス・コルテス=アルダマ(キューバ)
新井千鶴(三井住友海上)の勝ち上がりが確実。詳細は本文を参照されたい。
【プールB】
第4シード:ミヘイラ・ポレレス(オーストリア)
第5シード:マリア・ポルテラ(ブラジル)
有力選手:メガン・フレッチャー(アイルランド)、ダリア・ポゴゼレッツ(ポーランド)、マリア・ベルナベウ(スペイン)、バルバラ・マティッチ(クロアチア)、マルゴ・ピノ(フランス)、ジェンマ・ハウエル(イギリス)
強豪密集の最激戦区。トーナメント上側の山からはマリア・ベルナベウ(スペイン)の勝ち上がりがほぼ確実だが、下側の山では2回戦でマリア・ポルテラ(ブラジル)とバルバラ・マティッチ(クロアチア)、マルゴ・ピノ(フランス)とジェンマ・ハウエル(イギリス)の対戦がそれぞれ組まれている。実力的な勝ち上がり候補はポルテラとピノ。ここでは地力の差でポルテラが勝ち上がると予想したい。ベルナベウとポルテラは過去にベルナベウが8勝1敗と一方的に勝ち越しており、序盤戦の消耗度合いの差からも、このプールからはベルナベウが勝ち上がるはずだ。
【プールC】
第2シード:マリー・イヴ=ガイ(フランス)
第7シード:マリア・ペレス(プエルトリコ)
有力選手:エリザヴェト・テルツィドゥ(ギリシャ)、アリーチェ・ベッランディ(イタリア)、ガブリエラ・ヴィレムス(ベルギー)、キム・ポリング(オランダ)
上側の山からは昨年大会の銀メダリスト、マリー・イヴ=ガイ(フランス)の勝ち上がりが確実。下側の山ではマリア・ペレス(プエルトリコ)とキム・ポリング(オランダ)が3回戦でベスト8進出をかけて争うことになるが、ペレスは柔道の上手さで戦うタイプであり、ポリングが地力で押し切ると予想する。準々決勝のガイ対ポリングは、両者が同系統の攻撃型であることからスリリングな接近戦となる可能性が高い。勝ち上がりはガイと予想するが、ポリングは最近調子を上げてきており、こちらが勝利する可能性も十分にあり得るだろう。
【プールD】
第3シード:アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
第6シード:サリー・コンウェイ(イギリス)
有力選手:エルビスマル・ロドリゲス(ベネズエラ)、ジュリ・アルベール(コロンビア)、グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)、ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)
アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)とサリー・コンウェイ(イギリス)の寝技を得意とする強者2名がシードを務めるブロック。世界選手権で3度の優勝経験を持つベテランのジュリ・アルベール(コロンビア)がベルンホルムと3回戦で戦う位置に置かれている。この選手は調子に波があるものの、ここぞという大会にはしっかりとピークを合わせてくることが多く、今大会も好調が予想される。もしここでベルンホルムに勝利するような仕上がりであれば、そのままベスト4まで勝ち上がることになるだろう。一方、反対にベルンホルムが勝利するようであれば、同タイプの上位互換であるコンウェイが、次戦でベルンホルムを破りベストに4進出すると予想する。